研究課題/領域番号 |
18K11804
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
近藤 史 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (20512239)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 環境保全 / 植林 / 地域開発 / アフリカ |
研究実績の概要 |
本研究ではタンザニア南部に位置する3県(ンジョンベ、モンバ、ムビンガ)の住民グループを対象として、ンジョンベ県で発達してきた「火」の制御を核とする植林システムに学びながら、他の2地域で植林実践活動の支援と活動モニタリングをおこなう。これを通して、植林普及に必要な知識・技術を整理するとともに、現場で直面する課題に即して技術の適正化を促す組織や支援の在り方を検討する。2018年度は8月~9月に約30日間の現地調査を実施し、また日本でデータや資料の分析をおこなった。以下に概略を記す。 A:「火」の制御に関する課題の整理と技術の適正化 第一に、モンバ県で植林に取り組んできた住民グループのメンバーの親族で、先駆的に1930年代から木を植えてきた古老の実践に注目して参与観察と聞き取り調査を実施した。植民地期の経験が彼の植林実践に結びついていったプロセスを明らかにするとともに、外来の有用樹オーストラリア・レッド・シダーの植林と「火」の制御に関するエピソードを収集して知識と技術を整理した。第二に、ドイツ植民地期に実施された森林政策やミッションの環境教育がタンザニア農村での植林普及の基層となる可能性に留意しながら、ンジョンベ県でも住民グループ・メンバーやその家族のライフヒストリーと植林に関するエピソードを収集・分析した。 B:技術の共有や創発、利害関係者との調整を促す社会的仕組みの探究 上述したモンバ県の住民グループの活動が停滞していることから、メンバーと協議して組織と活動内容を見直し、以下の3つのアクション・リサーチを開始した。1)植林の阻害要因や林業の経済効果に対する子どもの関心喚起[小学校で分収造林を導入]、2)オーストラリア・レッド・シダーの販路開拓[近隣地方都市の家具職人と連携した家具の試作]、3)共同苗床の運営のモチベーションを維持する仕組みづくり[育苗用水を活用した販売用菜園を併設]。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンザニア南部のモンバ県とンジョンベ県で現地調査をおこない、十分なデータを収集できた。ただし、2018年度の現地調査期間中は、モンバ県の住民グループでこれまで植林を牽引してきたコアメンバー(青壮年男性)の多くが家庭の事情や出稼ぎなどによって調査地を離れていた。このため、現地調査では、上述のアクションリサーチを通じた技術の共有や双発、利害関係者との調整を促す社会的しくみの探究に重点を置いた。また、「火」の制御に関する課題の整理と技術の適正化については、不在メンバーの親族で先駆的に植林に取り組んできた古老への聞き取り調査を中心に分析をすすめていった。 また、2018年度は現地調査期間の制約からムビンガ県での調査を実施することはできなかったが、この点は2019年度に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画どおり、前年度から継続して、タンザニア南部に位置する3県で住民グループの活動モニタリングと構成メンバーへの参与観察と聞き取り調査をおこなう。これらを統合してA:「火」の制御に関する課題の整理と技術の適正化と、B;技術の共有や創発、利害関係者との調整を促す社会的仕組みの探究、という2つの軸でデータ分析を実施し、「火」を生業する技術の適正化やこれを支える社会的仕組みの発達と、地域の諸条件との関係を明らかにしていく。 なお、現地との情報交換によって、2018年度調査で不在だったモンバ県の住民グループのコアメンバーが2019年4月現在、徐々に帰村していることを確認している。したがって、「火」の制御に関する個々人の工夫エピソードの収集や植林地の踏査も遂行可能である。
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