研究実績の概要 |
2020年度までに実施したインドにおける皮革産業調査はExamining Stigmatization of Leather Industry: By Focusing on the Labor Forms of Dalits and Buraku, Findas International Conference Series (4), 3-16, 2020にまとめることができた。この知見と日本との比較研究について、まずその現代的な課題については、「生政治と同和行政・人権行政」, 部落解放研究, 214号, 4-25, 2021年、および「部落解放にかかわる5つの論点」, 「福音と世界」, 77巻3号, 6-11, 2022年において整理した。さらにケガレ‐キヨメ体制の比較研究については、「被差別部落という装置と原国家--側置される外部」, 『「論争」の文体--日本資本主義と統治装置』法政大学出版局、131-171, 2023年において、とりわけ日本近世の旦那場‐斃牛馬処理システムの意義と日本資本主義形成過程におけるその変容にフォーカスして理論的体系的な整理を行った。これらの調査報告と理論的体系的な整理によって、本科研で予定していた課題は基本的に遂行し、旦那場制度の現代的な意味についての提起を含んだオリジナルな研究を達成することができた。また、研究遂行過程で、アメリカに移住した被差別部落出身者に対する差別と生業の様態の参照の必要性が明らかになり、アメリカ・カリフォルニアでの調査を行うことで、被差別部落のケガレ‐キヨメ体制が差別を含んだ社会観念として日系移民社会においても継続していることが確認された。これについては「部落解放運動と人権」、日本史研究会「日本史研究」729号(2023年5月刊行予定)に反映される予定である。
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