研究実績の概要 |
この研究では援助プロジェクトのアウトプットの持続性を高めるとされてきた、二つの代表的な要素(参加とアラインメント)の実際の効果を、HWTS支援を例として、ウガンダでのフィールド実験で、自己申告ではなく客観的な指標で測定したデータの分析に基づいて検証したが、結果、どちらにも持続性を高める効果がないことが明らかとなった。参加の要素もアラインメントの要素も採り入れなければ、介入時には100%の実施率は、2 週間後に6 割、4 か月後で4 割にまで低下するが、参加の要素を取り入れてもこの実施率減少速度に変化はなく、アラインメントを行った場合はむしろ統計的に有意に早まったのである。 本研究の意義は開発援助コミュニティにおいてtake-it-for-grantedとされている前提を疑い、代替仮説を立て、それを体系的に検証したこと、しかも因果推論の黄金律である無作為化比較実験(Randomized Controlled Trials, RCT)で堅固に検証した点にある。これにより、アラインメントや参加型アプローチが導入されて久しいにもかかわらず、開発援助の非効率性と非持続性がいまだ改善されないという謎の一端が解明された。つまりアウトプットの持続性を高めるという観点からは、参加やアラインメントといったHands-onアプローチはもはや限界にきており、今後はむしろ、成功報酬の仕組みを使って被援助者の誘因構造を変えることで持続性を高めると理論上は考えられているHands-offアプローチ(Performance-based financing, Output-based disbursement, Program for results, Conditional Cash Transferなど)の可能性を検証していくべきことが明らかとなった。
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