研究課題/領域番号 |
18K11817
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安田 章人 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (40570370)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アクシスジカ / 狩猟 / 野生動物管理 / ハワイ |
研究実績の概要 |
本研究は、アメリカ合衆国ハワイ州に生息するアクシスジカ(Axis axis)を事例に、野生動物の新たな資源化と地域社会の関係性に焦点を当て、「環境ガバナンスと資源管理に関する理論的研究」、「フィールドワーク」、「調査地への研究成果の還元と応答」の3つを柱として、資源利用をめぐる社会動態を分析することによって、野生動物保全と資源管理に対する考察をおこない、人と野生動物の共存関係の構築に資する研究成果を目指すことを目的としている。 3年目にあたる2020年度は、サバティカル制度を利用し、2019年8月から2020年9月まで現地での長期フィールドワークを実施した。期間中、調査地では、狩猟者を含む地域住民に対する聞き取り調査を中心におこなった。その結果、アクシスジカの頭数が近年増加し、作物への食害が深刻化している状況が明らかになった。一方で、食料および娯楽観光のための資源として、アクシスジカを地元民が利用している実態も明らかとなった。州政府は、アクシスジカの管理に対して、猟期や性別に関係なく、無制限に狩猟できるように規制を緩和しているが、具体的な管理計画を打ち出してはいなかった。しかし、島内にも事務所を置く、国際的な自然保護団体によってヘリコプターからの間引き計画が予定されたが、資源としてアクシスジカに強く依存する地元民らは、その計画に反対する集会を実施し、地域社会自身による野生動物管理への強い考えを主張していた。つまり、元来、地元には生息せず、生態系への悪影響が懸念される外来種であっても、地域社会に対してポジティブな側面があれば、社会的には「その土地の生き物」として受け入れられる事例が示された。そのため、外来種がもたらす経済的あるいは生態学的影響に加え、地域社会の文化や歴史、そこに住んできた人々の価値観との「すり合わせ」という社会的な影響に対する分析も必要であろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年1月以降、新型コロナウイルスの世界的な蔓延によって、調査地に渡航することができず、2020年度の秋におこなう予定だった補完調査を実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの世界的な蔓延の影響を受け、本研究を1年延長することとした。ワクチン接種を受けることができ次第、調査地に渡航し、補完調査をおこなう。そこでの成果とこれまでの結果と融合し、考察を進め、関係学会での発表と学術論文への投稿をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年1月以降、新型コロナウイルスの世界的な蔓延によって、調査地に渡航することができず、2020年度の秋におこなう予定だった補完調査を実施することができなかった。本計画を1年延長し、2021年度内におこなう補完調査等に予算を充てる。
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