EUの福祉国家の個々の社会支出は、価値、規範意識や制度といった各国固有の構造の下に置かれている。また、政府債務危機後、EUにより厳しい財政規律が課されたため、収斂の動きは弱まった。その結果、EUの社会支出は社会民主主義、保守主義、自由主義といった従来の福祉国家グループの特徴を強める方向に進んでいる。 社会支出の側面から見たEUの福祉国家の形は、当面、①新しい社会的リスクに対応して現物給付を重視する社会民主主義、②伝統的な社会的リスクに対応する現金給付中心の保守主義(南欧)、自由主義及び新規加盟国、③徐々に新しい社会的リスクへの対応を進めている保守主義の3つにまとまっていくことが予想される。
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