研究課題/領域番号 |
18K11821
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
小原 篤次 長崎県立大学, 国際社会学部, 准教授 (00291039)
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研究分担者 |
石川 幸一 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (80406842)
門 闖 大阪産業大学, 経済学部, 教授 (00513053)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中国 / 東南アジア / インド / 自動車 / 直接投資 / GVC / 環境政策 / 技術移転 |
研究実績の概要 |
令和元(2019)年度は、前年度に引き続き、中国自動車企業の東南アジア直接投資を中心に文献調査・現地調査を実施した。現地調査は主要なモーターショーのほか、上海モーターショー―に参加していた中国の自動車部品メーカーの本社、世界の主要自動車メーカーで実施した。モ分析のフレームワークとして、中国自動車企業の海外展開を考えるうえで、日本をはじめ世界的な自動車企業との比較を重視したほか、EVやコネクテッド・カーで、自動車部品メーカーのうち、車載リチウムイオン電池や電子・通信産業の役割が高まることをパーセプションにして現地調査を立案・実施した。具体的な研究成果としては、(1)既存のガソリンエンジンにおける競争、(2)EVをはじめとする環境対応車における競争、(3)コネクテッド・カーにおける競争と自動車メーカーをとりまくトリレンマと位置付けている。「自動車メーカーのトリレンマ」 『東アジア評論』 (12) 2020年3月を刊行している。 石川幸一は東南アジアにおける自動車立地に大きな影響を与えるASEANの地域統合の観点で分析を続けており、明治大学や政策研究フォーラムで研究報告を行ったほか、「ASEAN地域の専門家の調査」「ASEAN中心性の試金石になる南シナ海行動規範(COC)策定交渉」「一帯一路構想とインド太平洋構想:求められる連結性分野での相互補完」「5つのインド太平洋構想」「米中貿易戦争とASEA」「ASEANのインド太平洋構想:ASEAN主導の枠組みを強調」「一帯一路構想と日本の経験」などの論考を発表している。 門闖は中国製造業の直接投資を支えるインフラとして金融機関の海外進出について着目し、特にアジアを中心に構築された中国銀行業のグローバルネットワークに焦点を当て、その特徴と周辺地域への影響を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元(2019)年度も前半から現地調査を実施することができたため、新型コロナウイルスの影響はあまり受けていない。 東南アジアやインドにおいて日系自動車メーカーのプレゼンスが極めて大きく、初年度から依頼していた自動車完成メーカーヒアリングが、国内と東南アジアで実現したことは研究全体のうえで有意義であった。一人はアジア市場全体を担当する役員でもうひとりは重要な部品であるエンジン技術者で東南アジアの工場長を経験した部長クラス。さらに上海と東京モーターショーに参加し、中国で自動車大手メーカーの本社工場と自動車用リチウムイオン電池の本社工場を訪問している。 個別ヒアリングやモーターシューでの質疑応答も加えると、EVなど環境車、コネクテッド・カーの進展には各自動車メーカーや新規参入するメーカーの戦略や企業努力だけではなく、各国政府のインフラ整備や環境政策、補助金行政が引き続き重要視されていることが分かった。 東南アジアやインドの各国政府がガソリン車からEVなど環境車、コネクテッド・カーの進展に大きく転換したとは言えない状態ではあるが、少なくとも日系自動車メーカーや中国系自動車メーカー、さらに、自動車部品メーカーは中国、欧州、米国など環境規制が進んだ地域、つまり次世代のモビリティーに備えて組織や研究開発体制を変更していることが分かってきた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの影響でアジア地域における自動車販売は急落したものの、中国の自動車メーカーはアジアにおけるM&Aを含めた直接投資に積極的である。フィリピンでは中国の自動車メーカーが日本の総合商社を代理店に利用して参入している。外資規制が厳しい地域や産業分野での参入方法として、日系メーカーのフィリピン参入パターンと同質性もある。大枠では、中国の自動車メーカー単独というより中国国内で合弁会社を組む外資、またはリーマンショック後、買収した自動車メーカーやブランドを活用した進出が特徴的である。日本の自動車メーカーの直接投資、グローバルバリューチェーン(GVC)の研究蓄積があり、そうした先行研究のリサーチフレームワークも活用しながら、学術論文の作成や学会報告を実施していく。 新型コロナウイルスの影響があり、中国や東南アジアを訪問するような現地調査は実施は困難だと考えている。初年度の予備調査から現地ネットワークは広がっており、電話やWEB会議方式などで各国政府や自動車メーカーおよび自動車部品メーカーへのヒアリングは可能です。 科研費3年目の最終年度のため、研究分担者と対面もしくはWEB会議方式で実施し、研究成果の集約に向けて、さらに緊密に情報共有を図っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2(2020)年度の直接経費は3人で合計60万円であり、次年度使用額との差額は書籍などにあてる計画である。
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