本研究は、現在アメリカ民主政が直面している修復困難な「分断」の現状と、それがいかなる歴史や制度の展開の結果齎らされたのかを問い、その解消の方途を探った。 第一の成果は、直接的には政党政治や選挙結果に表れる「分断」が、アメリカの場合、民主政の淵源に関わる長期的歴史認識に根差しており、それだけに短期的な政策的解決が困難なことが解明された点である。第二に、現代アメリカとよく似た「分断」現象は、グローバルにヨーロッパ、アジア、南米各国でも見られ、それぞれの地域研究者との意見交換を通して、1980年代以降各国で展開された新自由主義的な政策運営が、諸国の分断現象に共通に及ぼしてきた影響が明らかにされた。
|