本研究の目的は、ユーラシア地域大国として躍進する中国やロシアなど新興国経済の成長とともにグローバルに拡大する「国家資本主義(ステート・キャピタリズム)」について、その拡大傾向と発展の背景と意味、およびその仕組みと影響を解明することである。研究の主眼となったのは、国家資本主義のうごきについての分析が中国に比べ極めて不十分な状況にあるロシアの事例の検証であった。 本研究は、資源大国ロシアにおける国家資本主義の台頭を、ソ連崩壊後に市場経済への体制転換過程で生成された政府と企業の間に機能する特有の相互浸透関係を踏まえ、(1)市場と政府の関係、(2)資源と企業の役割、(3)公式(フォーマル)と非公式(インフォーマル)な制度の連関を軸に検証した。とりわけ本研究の学術的独自性が反映されるのは、現代ロシアを理解する鍵であるインフォーマリティ(非公式性)に着目し、公式制度と非公式慣行との交差と影響について検証する点であった。 研究期間全体を通じ、近年国際秩序のあり方に影響を及ぼし地政学的関心も高まる新興国や資源国における国家資本主義的な政治経済の実態の研究をロシアを中心に実施した。特にCovid19の影響により在外調査の制約が生じたものの、研究実績として、ロシアの戦略的産業分野における国家主導を特徴とする国家資本主義についての成果をはじめ、国内外の査読誌を含む論文を刊行し、国内外の学会での報告を行なった。最終年度については、論文発表や学会報告を続け、複数の査読誌への論文刊行も実現することができた。
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