研究課題/領域番号 |
18K11830
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
マカベンターイケダ マリア 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (40388236)
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研究分担者 |
青田 良介 兵庫県立大学, 減災復興政策研究科, 教授 (30598107)
馬場 美智子 兵庫県立大学, 減災復興政策研究科, 教授 (40360383)
加藤 恵正 兵庫県立大学, 減災復興政策研究科, 教授 (80161131) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 被災地復興 / フィリピンレイテ島 / 貧困 / 住民組織 / ソシアル・キャピタル / ソシアル・インクリュージョン / 社会的企業 / 主観的幸福度 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、レイテ島での調査を実施できず、先行していた文献調査により、フィリピンの被災現況を分析したうえで日本との比較研究が行った。 被災地は、様々な課題が錯綜しており、失業、貧困、住宅の不備、犯罪、健康阻害、家族崩壊など、貧困への転落を引き起こす「社会的排除」も発生する。 被災地復興には、新たな雇用・就業政策が必要とされた。そこでソーシャル・インクリュージョン型アプローチを設けて、社会的企業及び住民組織(PO)の重要性に着目してみた。地域ニーズにこたえる社会的企業は、多様な形で展開し、実際には地域内部の様々な活動との連携が不可避であり、付加価値の地域内循環率が被災地再生の大きな契機となる。 特に在外移民がレイテ島にUターンし、帰国者が立ち上げた社会的企業や住民組織の事例を中心に国際学会及び研究会(オンライン)で報告した。レイテ島の被災地復興において、専門知識やソーシャル・キャピタルを持つ帰国者が果たしている役割について検討した。 帰国者が主観的幸福感(SWB)向上の論理を通じて故郷レイテ島を再発見し、被災地となった故郷の再生に投資することで帰還を決意する仕組みについて考察した。帰国者が持つ郷土意識や社会的文脈を活用し、彼らが地域リーダーになり、コミュニティから信頼を得て、被災地を再生する良いスパイラルが生じていた。さらに、ソーシャル・メディアを通じて、帰国者が立ち上がったPOのコミュニティ再生と情報公開の強化戦略が外部から高く評価されていたことがわかった。だが、脆弱性が多いレイテ島のような地域には毎年自然災害が多く発生し、貧困や格差を拡大するリスクが懸念されている。レイテ島の復興のために活動しているリーダーやPOに対して、自治体との連携や政府の支援制度が不可欠であることを指摘した。以上、令和3年度の本研究の実績は、雑誌論文1本、学会及びワークショップ報告は2回であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は研究会や学会で2回研究報告を行い、議論を重ねる機会を多く確保できた。また研究チームにおいて、精力的に研究課題に取り組み、研究業績としてのディスカッション・ペーパーを残している。加えて当初予定していたアンケート調査のデータクリーニング作業も行った。以上が、現在までの進捗状況について「おおむね順調に進展している」とした理由である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的のひとつは、被災地レイテ島の現状と様々な社会的な課題や脆弱性について分析し、復興に向けて実証研究を踏まえた提言を行うことである。
今年度は文献調査や事例研究を進めつつ、調査に向けた仮説を設定し調査を実施する。令和4年度は、新型コロナウイルスの感染状況を見守りながら、現地でのフィールド調査を再開する体制を準備し、レイテ島の復興現状を再確認していきたい。 これまでの研究から、レイテ島の被災地再生や復興プロセス、そこで明らかになった課題について研究メンバー間で意見交換を緊密にし、まとめあげた分析結果を論文などによりジャーナル等に投稿していきたい。今までの研究成果を踏まえて、学会や研究会にも報告し、可能な限り国内外に情報発信を行っていく。また、フィリピンレイテ島での協力チームからの評価やフィードバックも取得していく。本年度では、こうした復興政策の実態調査で明らかにしたものと今までの成果をまとめた最終報告をとりまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染状況により、当初計画していた対面によるレイテ島の現地調査及び打ち合わせの予定に変更が頻繁に生じたことで、次年度使用が生じた。 新型コロナウイルス感染症が終息する時期を見計らって、現地調査を行うための旅費として活用したい。また本年度は、同実態調査についてレイテ島の復興に関わる政策の実態を明らかにし、最終成果のための学会費用や論文投稿の関連経費にも充当する。
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