研究課題/領域番号 |
18K11835
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
齋藤 純 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター中東研究グループ, 研究員 (80450550)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 労働者送金 / 湾岸アラブ諸国 / 直接投資 / 東南アジア / 株式市場 |
研究実績の概要 |
本年度は、資金受入国であるアジア諸国(フィリピン・マレーシア・インドネシア)での調査(2018年8月18-31日)を行った。本調査は、湾岸アラブ諸国から東南アジア3か国への直接投資や労働者送金などの資金流入が、現地経済と株式市場にどのような影響を及ぼしているかについて、市場関係者や監督当局から情報収集を目的とするものであった。株式市場に関するデータを収集するため証券取引所への訪問と投資家向けビジネス誌や経済系新聞のバックナンバーの収集を行った。同時に、有識者、市場関係者、投資会社へのインタビュー調査を行い、湾岸アラブ諸国からの労働送金流入の影響について現地でどのように認識されているかについても確認した。 また、労働者送金受入国では、現地家計が海外から送金された資金をどのように使用しているか、現地金融市場へどの程度振り分けられているかについての聴き取り調査を行った。 湾岸アラブ諸国企業からの直接投資は、今回の調査先の3か国では大きな額となっておらず、現地経済や株式市場への影響は限定的であるという現地証券会社の指摘は、当初の見立て通りであった。一方で、証券会社・銀行取引のオンライン化と国際化により、海外の労働者が母国家族の口座を経由せずに、直接証券会社のオンライン口座で株式の取引を行っている事例も、証券関係者から指摘された。海外から投資する小口投資家の投資額は必ずしも大きくないが、湾岸アラブ諸国で獲得した給与や賞与などの資金が、母国家族の生活費以外の貯蓄や投資資金(主に投資信託や不動産投資)として配分されることも多いことが分かった。海外労働者の約5%は投資活動を行っているとのフィリピン中央銀行の調査結果とも整合的な回答内容であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地株式市場の株価データを一括で購入するためには、高額の支出が見込まれ研究予算を超過する。トマソンロイターなどの商用データベースとの短期契約など、株価データの入手を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
今回の東南アジア諸国での調査を踏まえ、アラブ諸国と南アジアでのデータ収集の方法に改善の余地があると考えられる。特に各国投資家の金融行動については、現地のアンケート調査レポートのみならず国際機関の調査結果などを参照する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地での株価データの購入が想定よりも高額であったため、当該年度での支出予定分を次年度の商用データベースの契約費として計上する計画である。
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