研究課題/領域番号 |
18K11835
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
齋藤 純 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター中東研究グループ, 研究員 (80450550)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 労働者送金 / 湾岸アラブ諸国 / 直接投資 / 中東 / 株式市場 |
研究実績の概要 |
本年度は、資金受入国である中東諸国(ヨルダン・エジプト)での調査(2019年10月16-11月13日)を行った。本調査では、株価データの収集と株式市場を取り巻く諸制度に関する情報収集、そして湾岸アラブ諸国からの労働者送金流入の影響についての情報収集のために現地調査を行った。 本調査で訪問したヨルダンおよびエジプトの経済は、労働者送金や海外直接投資など海外からの資金に大きく依存している。これらの資金の多くは湾岸アラブ諸国から流入している。ヨルダンとエジプトでは、湾岸アラブ諸国からの労働者送金が国経済規模(GDP)と比較して5%以上であり、他の中東諸国よりも高い。2010-2012年の湾岸アラブ諸国から海外直接投資(フロー)の総額の平均は、668億ドルでありそのうち23億ドルは欧米先進国向けであったのに対して、エジプトへ10億ドル、モロッコへ4.9億ドル、チュニジアへ2.4億ドルなど中東北アフリカ諸国への流入額も小さくない。これらの国々では湾岸アラブ諸国からの直接投資(フロー)が総額の2割前後を占め、先進国からの直接投資を除くと、これらの中東・北アフリカ諸国にとって湾岸アラブ諸国は重要な直接投資の供給元となっていた。 湾岸アラブ諸国からヨルダンとエジプトに流入した資金は、現地企業の活動や家計の消費活動を通じて現地の証券市場に投資されている。しかしながらヨルダンとエジプトでは、株式市場の近年の動向は異なる。ヨルダンはエジプトに比較すると国内市場が小さく、周辺国経済への依存度が特に大きい。特に、イラク・シリア・レバノンにおける政情と経済の不安定化はヨルダン企業の活動を低迷させ、株式市場への投資を委縮させている。海外からの労働者送金は増加しているものの、観光業・不動産など一部の産業分野に投資が行われているに過ぎない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地株式市場の株価データを一括で購入するためには、高額の支出が見込まれ研究予算を超過する。トマソンロイターなどの商用データベースとの短期契約など、株価データの入手を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
今回の中東諸国での調査を踏まえ、南アジアでのデータ収集の方法に改善の余地があると考えられる。特に各国投資家の金融行動については、現地のアンケート調査レポートのみならず国際機関の調査結果などを参照する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初現地調査を予定していたレバノンが出発日直前に情勢悪化したため、旅程を大幅に変更した。
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