研究課題/領域番号 |
18K11843
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
井門 隆夫 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (60619138)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 旅館業 / 小規模事業者 / 労働生産性 |
研究実績の概要 |
本研究初年度においては、小規模旅館業が集積する鳥羽市において小規模事業者50者に対して決算書の参照調査を依頼し、うち36者から労働生産性を把握できる有効回答を得て集計と分類(ポジショニング)を行った。宿泊業の労働生産性は低いと指摘されるが、その要因は資本金5千万円以下の中小事業者(全体の94%)、とりわけ小規模事業者(全体の60%)の数値の低さにあるが、小規模事業者の経営実態が十分に把握されていなかった。その点、同一エリアでの労働生産性把握はこれまでにない成果であったと認識している。 基礎的な分類として、労働生産性(一人あたり付加価値)と総付加価値をもとにポジショニングを行い、「家族経営(兼業)型」「人件費過大型」「高労働生産性型」「高資本装備型」に分けそれぞれの特徴と課題の整理を行った。小規模旅館業は最も原始的な業態である家族経営型からスタートし、従業員を雇用、及び人件費の分配度合により、要員過剰で効率化が必要な「人件費過大型」もしくは、要員の絞り込みにより効率的な運営はできているが非正規化が進んだ「高労働生産性型」に移行する。おそらく労働生産性向上の目標を持つことはよいことであるが、現状として「非正規化」が高労働生産性向上の実態となっている現状がみられた。今後の課題として、いかに資本装備率を向上し、資本生産性を高めるかが課題であるが、そのためには、小規模業態を維持しながら、地域内での多店舗展開や素泊まり化等の多業態化、生産性の高い六次産業への参入等の事業計画及び地方創生ファンド等ニューマネーの誘導が課題である。 本研究は鳥羽商工会議所の協力のもとに実施できたことを申し添えたい。本年度の成果に関しては「日本労働研究雑誌」(7月発行号)に投稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画より予算執行率が低くなったが、予定していた鳥羽エリアでの調査は順調に進行した。当初には、調査員の入力用にタブレット端末を調査員人数分を購入して各事業者データを端末にエクスポートする手法を予定していたが、調査対象事業者のデータのほとんどがアナログで存在したためタブレット端末を購入しなかった。一方で、データの手入力が必要となり相当数の調査人工が必要となった。予定では社会人調査員に委託予定だったが、やむを得ず単価の低い学生調査員に依頼した。データは概ね予定の項目を収集できたが、商工会議所という信頼ある協力者があってこそ、調査員が学生でも許されたと考えており、今後、他エリアで調査する際には再考したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、鳥羽エリアに加えて、四万温泉エリアにおいて、具体的な労働生産性向上に向けた資本装備率の向上に関する意識調査及び特定事業者と具体的な実践活動の共同研究を実施を予定している。 具体的には、鳥羽エリアに関しては、高労働生産性旅館(1~3者)に関して事業計画を共同して作成し、地域DMOと協力しながら、資本(地方創生ファンド)を誘致を試みることを計画している。 四万温泉エリアに関しては、鳥羽での成果を地域で説明し、鳥羽同様の調査を行うことを計画している。そのうち廃業旅館を購入した1社では、経営者が大学院(M1)に入学。共同して、生産性の高い新業態としてよみがえらせるための基本及び実施設計、コンセプト作り、改装計画を今年度並行して実施する予定である。 本研究では、小規模旅館の実態把握をもとに、具体的な実行計画と事例を作り上げていくことを最終目標と考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は協力者(鳥羽商工会議所)が存在し、調査に相当な支援をいただいたため、調査謝金や事前打合せの回数を大幅に減らすことができた。初年度であったため、調査も最低限に済ますことを念頭においたが、次年度は(協力者のないエリアでの調査になるため)調査員を学生ではなく社会人に委託する等、信頼ある調査を計画しているため、初年度使用額の残額について謝金や毎月の打合せ等、旅費・調査費に充てることを予定している。
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