本研究は、宿泊業の60%を占める資本金1千万円未満の宿泊業に多い小規模旅館業の労働生産性について、生産性の低さの要因と改善の方向性を調査研究したものである。研究方法はフィールド調査を軸として、決算書の分析と経営者へのインタビュー調査等を行った。その結果、労働生産性を規定する主要因は、施設や労務効率といった表面的な問題ではなく、家族のみが出資する小規模事業者では、資産を担保とする連帯保証制度と多くの経営者預金が低収益性や債務超過を誘発し、結果として生産性を低めているという結論を得た。その改善に向けては債権法の改正のほか、新需要開発による収益性向上と家族以外の出資を促すスキームづくりが求められる。
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