研究課題/領域番号 |
18K11848
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
寺本 潔 玉川大学, 教育学部, 教授 (40167523)
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研究分担者 |
大西 宏治 富山大学, 学術研究部人文科学系, 教授 (10324443)
田部 俊充 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (20272875)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 観光教育 / ESD / 教材コンテンツ / 観光地理教育 / スウェーデンの教育 / 郷土教育 |
研究実績の概要 |
本年度は寺本は、ESDに立脚した観光教育教材の開発及び日本観光研究学会大会での研究成果発表を行った。さらに、佐渡市の小学校においては島の観光資源をSWOT分析で深める出前授業を、札幌の小学6年生には英語を使った北海道観光案内の対話授業を実施し、観光の花びらやポジショニングマップなど5例の教材コンテンツを開発できた。三重県志摩市で開かれた日本遺産シンポジウムにも参加し、持続的な環境利用の教材例として海女を取り上げることの有効性を明らかにした。田部は、ESDの先進国であるスウェーデン理解のための基礎的資料を収集し高等学校地理歴史科地理及び世界史の教科書及びカリキュラム分析からスウェーデンの「ガムラ・ウプサラ」「ヴァイキング(ノルマン人)」「ハンザ同盟」等の関連する文献,地理歴史科高校教科書及び資料集を整理した。また,ヴァイキング時代の理解の「ヴィスビー」「ガムラスタン」や博物館の2019年9月の現地調査を中心に教材化を図り,高校生への出前授業に活用した。大西は、富山県における学校教育や郷土教育教材の中に現れる観光地理教育的な要素を取り上げた。富山県の周辺地域は人口減少が激しく、その地域の活性化を図る方法を高校などで検討するような授業が行われている。入善高校にて地域活性化に観光の活用に対してRESASなどを活用しながら検討する授業について、調査を行った。また、南砺福野高校の教員に高校生が行う地域活性化提案についての授業についてもインタビュー調査を行った。地域活性化を考える際、高校生は人口増加を求める方法を模索するが、移住の増加は簡単ではなく、それを交流人口で補う重要性を認識し、その方法を構想することができる授業の実践が必要であることが分かった。小中高校段階を軸に観光教育のカリキュラムの構築に資する具体的なコンテンツの作成に大きな成果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ESDは間口が広く、なかなか教材開発を絞り込みづらかったが、本年度は具体的な指導用のコンテンツが数例開発できた。また、ESDの先進国であるスウェーデンや自然環境豊かな富山県における事例も集まり、観光地理教育の視点からも有益な事例が取集できつつある。 しかし、年度末に新型コロナウィルス感染症の蔓延による制約があり、分担者の田部や大西による海外での資料収集調査や国内での出前授業が思うように実現できていない面もあるが、学校教育における観光教育のカリキュラムの構築の基盤となる評価規準づくりが実現できたことは大きい。それらは、寺本により玉川大学教育学部紀要(論叢)第19号(2020年3月)に「多角的な思考を育む児童生徒の観光教材コンテンツ5例の開発」と題して成果報告できている。また、ESDに立脚した観光教育の在り方とSDGsとの関連に関しても寺本により「教職課程の学生にとってのESD教材の意味と授業活用」玉川大学教師教育リサーチセンター年報第9号(2019)にも発表できた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス流行により寺本や田部、大西共、観光教育に関する学校現場に出向く機会や国内外への資料収集、学会発表に制約が生じる懸念がある。現在、寺本は熊本県阿蘇市の教育委員会の協力も得ているものの、コロナ感染症の終息がなされなければ、具体的なカリキュラムの構築を支えるエビデンスを得ることができなくなる。このため、現地の教員にも研究に協力してもらいつつ、カリキュラム作成や具体的な教材コンテンツの試行などを依頼しつつ、研究を進めていく所存である。また、田部は中国や米国に出向いて更なる資料収集を実施し、大西は富山県を題材に観光教育のカリキュラム構築に尽力する予定である。幸い、日本観光振興協会観光教育部会からの協力も得ているので国内でのある程度の動きは把握できる。また、観光庁観光産業課観光人材室の担当官とも連絡を取り合っている。これらの公的機関との協力も構築しながら、最終年度に向けて研究を深めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、新型コロナウィルス流行により分担者田部が計画していた中国や米国への調査が実現できていないため、次年度に延期・使用する予定である。分担者大西によるトルコで開催された国際地理学会議(IGC)への参加は実現できているが、国内での成果発表がまだである。 研究代表者寺本による調査や観光教育の実験的な出前授業については、おおむね実現でき、使用額を十分に実現できているが、次年度に向けて熊本県阿蘇市及び北海道美瑛町におけるESDに立脚した観光教育実践を計画している。次年度は、3名による関連学会での報告に併せ、ESDに立脚した小中高一貫した観光教育のカリキュラムの構築を行う計画である。
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