研究課題/領域番号 |
18K11851
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研究機関 | 京都外国語大学 |
研究代表者 |
原 一樹 京都外国語大学, 国際貢献学部, 教授 (90454785)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 観光と哲学 / 観光倫理 / 高野山 / 地域文化観光 / 訪日観光客 |
研究実績の概要 |
本研究は、3年間の研究期間をかけて、著名な観光学者J.Tribeによる「哲学的実務家」育成への提案を理論的背景の一つとしつつ、観光現象が活発化し存在感を増すグローバルな観光社会において、観光現象に関する哲学的・倫理学的な観点からの本質理解力と批判的分析力を持ち、観光政策や観光ビジネスを中心とする様々な社会の現場で、「よりよき観光社会」の形成に向けて主体的に分析・提案・行動が行える観光人材を育成する為の教育内容や教育手法を構築するための基礎研究を行うものである。 2018年度は、観光に携わる人々と諸価値との関わり方についての概念的整理を行った。具体的には、外国人観光客の増大が続く高野山を主要な事例として、人々がいかなる形で価値の発見・価値の伝達・価値の創造に関わっているか、現地の人々への聞き取り調査や外国人観光客へのアンケート結果を踏まえつつ、他地域へも地域文化観光の推進にあたり留意すべき点への示唆を与えることも目指し、哲学的次元での考察を展開した。この成果は『地域文化観光における価値の発見・伝達・創造―高野山を訪れる外国人観光客を手がかりに―』と題し、2019年7月刊行予定の哲学雑誌『ひとおもい』創刊号(東信堂)に掲載予定である。 また、2018年8月14日には、マレーシア科学大学で開催された国際フォーラム“INTERNATIONAL SYMPOSIUM ON HERITAGE, GASTRONOMY & TOURISM: A REFLECTION”にて、“World Heritage Sites and Spiritual Tourism: The Case of Mt. Koya”と題し口頭発表を行い、外国人観光客が増大しつつある高野山の観光状況全般について解説すると同時に、観光者による解釈形成、真正性、商業化の問題について哲学的・倫理学的観点からの考察を展開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、そもそも観光に関わる様々な主体がいかなる形で諸価値に関わるかという観点から、観光に関する「哲学的実務家」育成のための教育プログラム整備に向けた基礎的・概念的整理作業を実施したと言える。特に、価値の発見、価値の伝達、価値の創造といった事象について、具体的事例(高野山観光)をベースに、一定の整理を行うことができた点が成果と言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、観光学者マキァーネルが提唱する「創造的観光者」の議論の批判的更新をはかると共に、「観光者の主体的変容」の内実や可能性について、概念的・経験的調査を進める予定である。この作業を進めるにあたり、観光と「コスモポリタニズム」との関係性という視点を導入し、観光現象や観光倫理教育の世界史的観点からの可能性について、政治哲学の議論を参照しつつ検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究上の旅費については、所属機関からの経常的研究費も並行して使用できる状況であったため、旅費支出に余剰が生じた。来年度の現地調査で使用予定である。
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