研究課題/領域番号 |
18K11852
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
金光 淳 京都産業大学, 現代社会学部, 教授 (60414075)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アート・フェスティバル / 異化効果 / 認知ネットワーク分析 / 観光社会学 / 現代アート / 瀬戸内国際芸術祭 |
研究実績の概要 |
本研究は、瀬戸内芸術祭の来場者を対象としたアートサイトに関する地域問題状況のコンセプトマップの測定と投稿SNS 画像の深層学習による内容分析により、アート・サイトの訪問者がアートサイトの訪問(作品鑑賞)を契機とし、いかに深層認知構造をクリティカルに変化させたかをとらえることである。そのことによってアート・フェスティバルによる「価値転換効果」を測定することを目的とする研究である。 本年度は、上記の瀬戸内国際芸術祭の現地での2つの調査によって、研究目的遂行のためのデータの収集を行うことができた。一つ目の調査では、豊島が抱える産業廃棄物問題が島に展示されているアート作品とどのように結びついて連想されているかという連想ネットワーク調査が行われ、180票あまりのアンケート回答を得ることができた。台風の影響も予定数を下回る回答数であったが、統計的な分析に十分嘉数を収集することができた。 2つの目の調査はハンセン病の療養施設のある大島で行われた。大島に渡るフェリー港である高松港において、訪問前と訪問後の両方に訪問前のハンセン病と大島のイメージネットワーク図を比較的に作成してもらった。20ほどのサンプルしか得ることができなかったが、その変化を見るには十分なケース数を得ることができた。これらの調査結果はすでに集計済みであり、暫定的な結果は観光学術学会(コロナの影響で中止となり予稿集のみ出版されることになった)と日本社会学会で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究の本質的な部分である2つの重要な調査はすでに終了しており、集計はすでに終了しており、コロナによる在宅時間の増加によって、逆に関連文献の文献収集と解読の時間的余裕ができ、予想以上の進捗状況であると言える。特に現代アートに関連する、美学、哲学、美術・文芸評論、精神分析、人類学の文献を大量に読むことができ、集計結果を論文化する際の問題意識の深化に役立つと思われる。 とりわけ今後社会科学で重要になってくるアクターネットワーク理論基本的な文献を大量に収集し、読むことができたため、「アートと社会のあり方」などの議論に大いに活かせるものと確信している。
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今後の研究の推進方策 |
第一の調査で収集した豊島データは様々な設問を設けており、単純集計に基づいて導かれる諸仮説に基づいて様々な手法で統計的に解析し、知見を得ることが本年度の最大の課題となる。特に観光客と地元民の認知構造の比較のほか、観光客でも産廃に関する問題意識の違いや、現代アートに関する感度がどのような産廃への問題意識に関連しているのかなどといった点を明らかにする予定である。 論文化にあたって、精神分析、美学、文芸理論、美術評論の理論から借用した「アレゴリー」などの概念を理論的説明において利用するために、ドゥールーズ、ガタリ、フーコー、ランシエールらフランス哲学の難解な文献をさらに読み込む必要がある。 コロナ影響でリアルな学会そのものが不活発になっているが、貴重なデータを得ることができたので、これらを実証的な分析結果だけではなく、哲学的な議論によっても美学的に高い水準の理論構築に結びつけることが可能であるので、関連学会誌への複数の投稿という形で成果を広く発表していく予定である。
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