研究課題/領域番号 |
18K11855
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
高橋 一夫 近畿大学, 経営学部, 教授 (90469304)
|
研究分担者 |
柏木 千春 流通科学大学, 人間社会学部, 教授 (50454749)
田村 匡 大阪成蹊大学, 経営学部, 教授 (70586693)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | DMO / エリアマネジメント / ツーリズムクラスター / 地域エコシステム / イノベーション |
研究実績の概要 |
本研究は、観光地経営の主体であるDMO(Destination Marketing/Management Organization)が、①日本の観光目的地の振興・発展においてツーリズムクラスター(観光産業集積)の育成によるイノベーション創出をおこない、②地域エコシステムとして地域活性化を推進するという新たな進化の可能性の解明を主テーマとしている。すなわち、DMOが地域エコシステムのプラットフォームとして成功する要因と地域にツーリズムクラスターを育成するプロセスについて理論的・実証的に考察することを目的としている。 地域エコシステムとしてのDMO研究については、これまで、DMOが地域エコシステムの中核になる3条件を抽出し、ランドオペレーター組織へのヒアリングを通じてインバウンド観光におけるビジネスエコシステムの形成過程を明らかにした。また、チャールストンDMOへのヒアリングを通じて9・11の危機管理時のマーケティングを考察した。今後は、DMOの地域エコシステムとしての理論的発見と実務的示唆を取りまとめていく。 ツーリズムクラスター研究については、これまでマークセンの産業クラスターを参考に、ツーリズムクラスターの4タイプを設定し、形成条件の洗い出しを進めた。文献調査とヒアリングから①観光クラスターの特性、②観光クラスター形成を目指した観光地経営環境、③観光クラスター形成に関する影響要因について仮説提示をおこなった。これらを実証すべく、ヒアリング先のデータを検証し、各地で進むMICE施設のコンセッションの導入によるツーリズムクラスター形成の可能性を整理し、イタリアのアルベルゴ・ディフーゾを中心に海外事例を収集した。今年度はこれまでのデータをもとに仮説の実証とツーリズムクラスター形成のプロセスを明らかにしていく。 昨年度は、コロナ禍で研究が停滞した。今年度に取り戻したい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者、研究分担者それぞれが担当するツーリズムクラスター関連地域に調査を予定していたが、コロナ禍の影響により、移動あるいは現地での受け入れ自粛の影響で研究を進めることができなくなった。DMOの地域エコシステムとして地域活性化を推進するという新たな進化の可能性についても、ツーリズムクラスター調査と連動しているため、文献での整理にとどまった。 一方、コロナ禍における日本版DMOが観光客と住民との関係性をいかにして再構築すべきかについての考察、クライシスマネジメント時におけるDMOの機能の考察についての研究が進み、本研究に新たな示唆を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
DMOが地域エコシステムとして成功する要因と地域にツーリズムクラスターを育成するプロセスについて一般化ができるように取りまとめをおこなう。 本研究の代表者である高橋は、DMOの地域エコシステムとしての理論的発見と実務的示唆を取りまとめていくとともに、ツーリズムクラスターにおいては、これまでの仮説の実証とクラスター形成のプロセスを明らかにしていく。 また、高橋(2018)が創発型クラスター(地域産業が観光関連クラスターと結節し、ウィン・ウィンの関係を築かれた状態)の生成と発展について、結節機能としてのDMOの重要性をワインツーリズムの事例から唱えているが、「創発型クラスター」は、観光関連クラスターと地域の他分野産業クラスターとの結節を前提としている。これに対し、研究分担者である柏木は「拡張型クラスター」の発展過程に焦点を当てた研究を進行している。柏木の言う「拡張型クラスター」とは、生産システムが「非観光事業」であったところが、次第に「観光事業」へと変容して出来上がっていくクラスターを意味している。その新たな生産システムへと変容させた地域におけるDMOの役割について、先行する欧米の事例や日本版DMOで先進的と言われている地域事例から。諸要因に接近するのが、柏木の課題である。 同じく田村は、 高橋(2018))におけるツーリズムクラスターのモデルタイプに従い、タイプ4(政府・自治体の施設やインフラがコアになっている集積)のケースの取りまとめをすすめる。特に神戸のコンベンション施設やしまなみ海道の道路・自転車関連施設等について、公的インフラが産業クラスター形成にどのように関与するか等について、そのプロセス分析等を深める。また最近の経済循環分析等と産業クラスターの関係の実証的研究のまとめを行う。 研究代表者、分担者ともコロナ禍で進められなかった研究課題を継続する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により地方への出張や現地調査並びに対面でのインタビュー調査等が不可能であった。次年度は、今年度には不可能であった現地調査研究を中心に行う予定である。 [国内調査] 栃木県大田原市、熊本県阿蘇地域、瀬戸内DMOマネジメント地域など また、日本商業学会、日本地域活性学会、日本観光研究学会、日本ホスピタリティマネジメント学会等において研究成果の発表を行う予定である。
|