研究課題/領域番号 |
18K11856
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
後藤 和子 摂南大学, 経済学部, 教授 (00302505)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 無形文化遺産 / 工芸 / ミュージアムと観光 / デジタル文化観光 |
研究実績の概要 |
本年度は、文化観光のリソースとなる無形文化遺産である工芸と、有形文化遺産であるミュージアムに焦点を合わせて研究を行った。前者については、イタリア・カターニャ大学のAnna Mignosa 講師らとともに共同研究を行い、その成果は英文共著2冊として刊行された。 工芸研究の難しさは、工芸が無形文化遺産であるため、有形文化遺産と異なり、生きて継承されないといけない、つまり、産業として持続可能でなければならないという点である。工芸は無形文化遺産でもあり、産業でもある。従来の文化経済学では、有形文化遺産の身を対象とし、それを公共財として扱ってきた。しかし、工芸はこの理論枠組みに収まらない特徴を持つ。そこで、共同研究では、工芸を無形文化遺産であるとともに、クリエイティブ産業と捉え、新しい理論枠組の構築を試みた。 後者については、2019年9月に京都市で開催されたICOM(世界博物館会議)大会に学術委員として参画し、ミュージアムの文化的・社会的・経済的価値について論考をまとめた。また、観光等を意識したミュージアムの新しい定義に関する論考もまとめ、『文化経済学』に発表した。更に、デジタル・ミュージアムを活用したデジタル文化観光について、オランダの研究者とセミナーを開催し、共同研究を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文化観光のリソースである工芸やミュージアムに関して、国際共同研究を行うことができた。 また、2019年に京都でICOM大会が開催され、ミュージアムの役割を拡大するという世界的流れを知ることができた。更に、ミュージアムのデジタル化に関して継続的に研究を行っているオランダの研究者とICOM大会の機会に共同研究について議論し、国際比較研究に着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、更に、国際共同研究を進め、文化資源が観光のリソースとなり、そこで得られる収入が文化資源の保存に還流するための政策について検討していきたい。 現状では、日本の地方に位置する公立博物館等は財源不足に苦しんでおり、博物館の持続可能な財政は、いかにして可能かというのは難しい問題である。地方自治体からどんな支援があれば、博物館の資産を活かし地域活性化と博物館の持続性の両方を達成できるのか、文化政策と観光政策の両面から考えてみたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際文化経済学会のアジアワークショップが、ベトナムで開催されたため、予想より支出が少なかった。また、ICOM大会も京都で開催されたため旅費がほとんどかからずに共同研究が行えた。ミュージアムの視察も多く行ったが、科研費分担者の方の資金を優先したため、残額が生じた。
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