研究課題/領域番号 |
18K11860
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研究機関 | 熊本学園大学 |
研究代表者 |
高木 亨 熊本学園大学, 社会福祉学部, 准教授 (20329014)
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研究分担者 |
井出 明 金沢大学, GS教育系, 准教授 (80341585)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 「悲劇」 / ダークツーリズム / 東日本大震災 / 満蒙開拓 / 水俣 / 災害記憶 / 継承 / 当事者 |
研究実績の概要 |
本研究は、人類の悲劇そのものの記憶の継承に加え、これまで注目されてこなかった復旧・復興の経験・記憶の継承についてダークツーリズムの考え方を援用し、次のアクシデントに備えるための記憶継承手法のパッケージ化を目的としている。今年度の実績成果としては、東日本大震災での津波被災地における被災継承活動とダークツーリズムとの関係についての調査、満州からの引揚者たちが再び故国に帰ってきた長崎県佐世保浦頭での調査、ダークツーリズム関連の出版、陸前高田で活動中の写真家を交えてのシンポジウム開催などがあげられる。 津波被災地調査では、宮城県女川市(七十七銀行女川支店家族会)、石巻市大川小学校、南三陸町(防災庁舎)、三陸鉄道、岩手県大槌町、山田町を訪問し、それぞれの被災地での継承活動について体験するとともに、調査をおこなった。単著としては研究分担者の井出が、「ダークツーリズム:悲しみの記憶をめぐる旅」「ダークツーリズム拡張:近代の再構築」「真実の潜伏キリシタン関連遺産:残酷な歴史を見つめる」を出版した。 東日本大震災のように、「当事者」が多数存在する「悲劇」と満蒙開拓や水俣病事件のように「当事者」の存在が稀少となる「悲劇」とでは、その継承の仕方が異なっている。人(当事者)からモノ(遺品・アーカイブズ)へと、後世に語るモノの変化が見られる。このほか、ダークツーリズムの対象としてどこまで「旅人」たちを引きつけることができるのか、また、ダークツーリズムとして「当事者」ならびにその地域の人々が受け入れることができるのか、今年度の調査を通じて、そのような視点が整理されつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の高木による東日本大震災をはじめとする被災地での記憶の継承調査をおこなうとともに、70年以上前の出来事である満蒙開拓からの引揚者の記憶継承や60年以上前の水俣病事件についても聞き取り調査を進めている。当事者の存在が危うくなってくる段階での記憶の継承について研究を進めている。 研究分担者の井出は、専門であるダークツーリズムの調査研究を進めており、本年度に著書を2冊出版している。また、陸前高田を中心に被災地で活動している芸術家の瀬尾夏美氏をゲストスピーカに、トークイベントを開催。第三者として被災地に赴き、当事者と交わることで、第三者が継承者へと変化していく姿について共有する機会を設けた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目以降の研究は、まず、被災地での継承活動についての事例収集を進める。また、研究の実践を目的として、東日本大震災における被害の当事者と水俣(予定)との交流を通じ、継承においてダークツーリズムの視点が果たす役割についての意見交換会を開催する。 さらに、今年度得られた論点を踏まえながら、記憶の継承とダークツーリズムのもつ可能性について議論を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度以降、東日本大震災被災当事者と熊本・水俣との意見交換会等を予定しており、その分の予算を確保するため。
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