研究課題/領域番号 |
18K11860
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研究機関 | 熊本学園大学 |
研究代表者 |
高木 亨 熊本学園大学, 社会福祉学部, 准教授 (20329014)
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研究分担者 |
井出 明 金沢大学, GS教育系, 准教授 (80341585)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 「悲劇」 / ダークツーリズム / 東日本大震災 / 満蒙開拓 / アウシュヴィッツ / 災害記憶 / 継承 / 当事者 |
研究実績の概要 |
本研究は、人類の悲劇そのものの記憶の継承に加え、これまで注目されてこなかった復旧・復興の経験・記憶の継承についてダークツーリズムの考え方を援用し、次のアクシデントに備えるための記憶継承手法のパッケージ化を目的としている。今年度は過去にあった人類の悲劇について、その当時の当事者が鬼籍に入りつつある出来事(イベント)について、その状況、継承について調査をおこない、事例を蓄積することに重点を置いた。戦後75年近く経るなかで、当事者の存在が少なくなりつつある、満蒙開拓団と、そのような中でも継承に取り組んでいるアウシュヴィッツの取り組みについて調査をおこなった。満蒙開拓団は、アウシュヴィッツのような継承のシステムが、阿智村にある満蒙開拓平和記念館や飯田市での取り組み以外には、主要なものがなく、各地の引き上げ集落でもその継承が課題となっている。今回、当事者たちに同行する形でかつての旧開拓村を訪問、彼らとともに当時の様子を追体験するとともに、その継承方法について考える機会を持った。その成果として報告書を作成した。 また、アウシュヴィッツでは、アウシュヴィッツ資料館唯一の日本人公式ガイドである中谷氏のガイドのもと、第3者による悲劇の継承について体験をしつつ参与観察をおこなった。加えてガイド後に中谷氏への聞き取り調査をおこなった。この成果は、次年度(令和2年度)に報告会をおこなう予定である。 東日本大震災のように、「当事者」が多数存在する「悲劇」と満蒙開拓やアウシュヴィッツのように「当事者」の存在が稀少となる「悲劇」とでは、その継承の仕方が異なっている。第3者が当事者化しつつ後世に語る意味が生まれてきている。このほか、ダークツーリズムの対象としてどこまで「旅人」たちを引きつけることができるのか、アウシュヴィッツはその点非常に「成功」しているともいえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はより広い視点で、ダークツーリズムと人類の悲劇との記憶の継承について捉えながら、目的達成のために取り組むことができた。当事者に同行して旧満州開拓村への訪問ができたことは、有効であった。訪問団は旧開拓団の当事者のほか、その2世・3世、研究者に加え、一般の参加者も加わるツアー形式で実施された。こうした取り組みでの一般参加などのニーズも含め、状況把握ができた。加えて、訪問団の報告書の作成を担当、参加者の感想文をとりまとめ、当事者と非当事者との温度差などもつかむことができた。 アウシュヴィッツでは、中谷氏からのガイドとともに、聞き取り調査をおこなうことで、第3者の視点で悲劇を語り続けることについて、整理することができた。また、クラクフの町では、旧ゲットー、およびユダヤ博物館の訪問・見学を通じ、継承について考える機会を得た。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、今年度諸事情により開催できなかった、東日本大震災被災当事者と、水俣での継承者との交流会を、本研究のまとめとして実施予定である。また、補足調査としての東日本大震災被災地域での継承者への聞き取り調査を予定している。あわせて、学会発表等で成果を報告する予定である。
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