日本の農村地域では1990年代半ば以降、農家民泊による地域活性化が本格的に取り組まれ、これまでに教育旅行の受け入れで多くの宿泊客を集める地域も出てきた。しかし、個人旅行客に対応した経営を行っている農家民泊は少なく、個人旅行客が農村地域を宿泊する施設として定着していない。一方、衰退が進む農村の活性化策や、農村地域の新たな魅力創出、活用といった面では、農家民泊の重要性は大きく、特に個人旅行客の受け入れをメインとした農家民泊を行うことは、急増するインバウンド客の地方旅行の受け皿になりうる。本研究では、個人旅行客の受け入れ実績のある農家民泊経営の傾向を明らかにしながら、個人旅行客の受け入れを主とした農家民泊の経営および維持のためのモデルを構築することを目的とした。 最終年度ではこれまでの調査結果をまとめつつ、農村観光を推進する組織や農家民泊を支援する組織にヒアリング調査を実施することができた。 研究機関全体を通じた成果としては、①国内各地の個人旅行客の受け入れ実績のある農家民泊に対して現地視察およびインタビュー調査を行い、農家民泊経営の実態を明らかにした。②農家民宿が普及しているイタリアのアグリツーリズモ(=農家民宿)について、現地視察およびインタビュー調査を実施し、その特徴を考察した。③日本およびイタリアの農家民泊推進支援組織に対してインタビュー調査を行い、特徴や課題をまとめた。今後、日本で欧州のように個人旅行客が地方を旅行する際に農家民泊へ滞在するケースが普及、拡大するためにも、このような研究の蓄積が望まれる。またその発展に本研究が一助になることを願う。
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