研究課題/領域番号 |
18K11878
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
金 振晩 帝京大学, 経済学部, 教授 (60554160)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歴史的建造物 / 宿泊施設 / ランドマークトラスト / バリューマネジメント |
研究実績の概要 |
本研究は、歴史的建造物のリノベーションに関わるステークホルダー間の構造的関係を把握し、日本における歴史的建造物の有効な運用モデルの構築を試みる。具体的には、文献研究を通じて歴史的建造物の概念及び研究範囲を明確にするとともに、有効な方法論としてアセットマネジメントを取り上げ、国内外の先進事例分析を通じて自立的運用に必要な諸条件を整理する。また、歴史的建造物に関わるステークホルダー(所有者、管理者、行政関係者、利用者など)を対象にヒアリング調査及びアンケート調査を通じて現状把握及び課題を析出し、上記の結果に基づき、産学官の専門家集団によるディスカッションを行い、アセットマネジメント手法に基づいた日本型歴史的建造物の自立的運用モデルの構築を検討する。 2018年には、文献研究を整理するともに、イギリスのランドマークトラストの取り組み及び有識者のインタビュー調査を実施した。その結果、「保護という網から抜け出た建造物」を「宿泊施設」として活用し、宿泊料金から維持・管理費用を賄うというスミス卿のアイデアを実現したLTの手法は、歴史的建造物を宿泊施設として活用する上で、さまざまな工夫がなされている。特に、宿泊業として時代の状況を踏まえた安定的な経営を続けたことから、英国最大の自然・文化資源保護団体であるNTや国内外の団体がLTの手法を導入するなど、欧州において建築遺産の保存・活用手法の一つとして認識されるまでに至ったと考えられる。 また、日本国内における歴史的建造物の保存と活用の事例として、バリューマネジメント株式会社を取り上げ調査を行った。その結果、篠山の取り組みは、古民家をリノベーションして宿泊施設として営業を行っているが、1カ所の一つの建物ではなく町の中複数個所で複数の建物をひとつの宿泊施設として営業をしており、損益分岐点を超えていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画上、2018年の目標は、文献研究を通じて、貴重な歴史的遺産を保存・活用するためには、ステークホルダー間の構造的関係を把握し、保存と活用に対するパラダイムシフトの過程を明らかにすることであった。 そのため、先進事例分析を通じた歴史的建造物の自立的運用に必要な諸条件の整理、国内事例としては、バリューマネジメントの取り組みや古民家再生事例、海外事例としてはイギリスのLandmark Trustの調査を計画し、計画通り実行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究計画は、継続的に文献研究を行うと同時に、国内外の事例調査を通じて保存と活用に対するパラダイムシフトを確認する。国内事例としては、奈良の監獄ホテルや、文化財保護法の改定に伴う自治体の取り組みを対象に行い、海外事例としては、スペインのParadorを中心に事例調査を行う。 また、歴史的建造物にかかわるステークホルダーの構造的関係を把握するため、所有者、管理者、行政・民間関係者のヒアリング調査及び利用者の認識調査により、歴史的建造物の保存に向けた認識及び課題を整理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度の国内事例調査の予算が少しあまり、次年度使用額が生じた。2019年度は国内調査の部分が、行政のヒアリング調査を含め多く実施しなければならない状況である。従って2018年度未使用の予算は、2019年度の国内事例調査などに使用する計画である。
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