研究課題/領域番号 |
18K11888
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研究機関 | 福岡女学院大学 |
研究代表者 |
田中 英資 福岡女学院大学, 人文学部, 准教授 (00610073)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 文化遺産 / 観光開発 / 道 / トレッキングツーリズム / 移牧民 / トルコ / 地中海 / 地域振興 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、先行研究や調査対象に関してこれまでに分かっていることを整理し、本研究課題の方向性をより具体的に定めることを目的に8月に国際会議での発表を2回行った。また、10月にトルコにおいて現地調査を行った。 まず、立命館大学で行われた 国際会議 "Future of the Past" において、近年トルコ地中海地方で注目されているトレッキングルート「リュキアの古道」における文化遺産をめぐる問題に関する発表を行った。また、ストックホルム大学で開催されたヨーロッパ社会人類学会の研究大会 "15th EASA Biennial Conference - Staying - Moving - Settling"の分科会(P107)"From Paths to Roads: The Transformative Capacities of Roads on Movement and Relationships"において、「リュキアの古道」トレッキング観光を準備したトルコ地中海地方における道路網の整備と観光産業の発展に関する発表を行った。 10月の現地調査では、トルコ地中海地方に10日間滞在した。まず、「リュキアの古道」のルート上にあるゲレミシュ村のホテルの経営者や滞在している宿泊客への聞き取りのほか、周辺で「リュキアの古道」を実際に歩くことを含めた「リュキアの古道」の実施状況に関する参与観察を行った。その後、アンタルヤに移動し、アンタルヤを拠点として「リュキアの古道」や「聖パウロの道」など、トルコ各地の文化・歴史をテーマとしたトレッキングルートを管理するNGOである「Culture Route Society」の担当者に聞き取りを行った。ルート上の自治体で実施されている観光を絡めた地域振興のプロジェクトやトレッキングルートの維持に関する問題などについて確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度は、研究計画書に挙げた調査項目のうち、①20世紀後半以降のトルコ地中海地方の地域における社会変容、②道と地中海保養地観光の関わりについて、現地調査を含めて重点的に調査を行う予定であった。 調査項目②については、10月に現地調査を行った際に、現地での聞き取りなどから一定の成果を上げることができたと考えている。しかしながら、学務とのスケジュール調整がつかなかったことやトルコへの航空券代が想定より高くなったこともあり、平成30年度中に2回の実施を予定していた現地調査は10月の1回のみになってしまった。そのため、調査項目①については、本研究課題以前におこなってきた調査からわかっていることについての整理はつけられているものの、詳細についてさらなる調査を行う時間がとれなかった。また、現地調査のスケジュールの都合で、10月下旬にデムレで開催されたイベント「デムレ・ケコヴァ アウトドアと移牧民ヨリュクの食文化フェスティバル」にも参加することができず、このイベントの実施状況については、令和元年度に担当者への聞き取りなどを行う必要が生じた。以上のことから、平成30年度の取り組みは、「やや遅れている」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は、勤務校より英国ケンブリッジ大学のマクドナルド考古学研究所にて長期研修を行う機会を得られたため、学務を離れた形で本研究課題に取り組むことが可能となった。そのため、より柔軟に現地調査のスケジュールを組めるメリットを生かし、2週間から4週間程度のトルコでの現地調査を3回程度実施する予定である(4月、8月、10月を予定)。特に、ゲレミシュ村において毎年4月に行われている観光週間の行事として15年以上実施されてきた「リュキアの古道」を歩くイベントや、10月にデムレで行われる予定の「デムレ―ケコヴァ アウトドアと移牧民の食文化フェスティバル」など、通常であれば校務の都合で参加が難しいイベントの参与観察を行うことで、平成30年度に十分に調査できていない項目についても研究を進める。上記の現地調査と、昨年度からの調査結果を整理しつつ、学会や研究会において研究発表を行い、研究成果の論文化を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
トルコへの航空券代金が想定より高くなったため、平成30年度に2回を予定していた現地調査は1回となった。しかし、トルコでは近年トルコリラの下落が続いており、現地での旅費などは当初の試算よりもかなり安くなったこともあり、結果的には次年度使用額が生じた。令和元年度には現地調査を3回行う予定で準備を進めており、ここで生じる費用(旅費、図書費)に充てる予定である。
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