研究課題/領域番号 |
18K11892
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
海妻 径子 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (10422065)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 男性性 / ジェンダー / 近代家族 / 日本史 / イデオロギー |
研究実績の概要 |
今年度は前年度に十分な分析のできなかった、経綸学盟や日本社会主義研究所など国家社会主義理論系と、愛郷塾など農本アナーキズム系についての分析をおこなうことを課題とした。 経綸学盟については、その中心人物である、上杉慎吉と高畠素之についての先行研究の整理をおこなった。上杉慎吉については今野元『吉野作造と上杉慎吉』(名古屋大学出版会、2018)のような、上杉のドイツ女性運動に対する見解や家族との関係なども含めて、新しい角度から再検討する研究も出現しつつあり、また子の重二郎による回想記などもある。これらを参照しつつ、『太陽』『廓清』『婦女界』などに執筆された上杉の評論を収集し、近代家族イデオロギーに関わる言説の抽出作業に着手した。 他方で高畠素之は、管見の限り、いわゆる思想研究ではなくその私生活や家族関係にも言及のある新しい研究は出ておらず、したがって田中真人『高畠素之 日本の国家主義者』(現代評論社、1978)で描かれた人間像を超えた参照軸を立てづらい状況であることがわかった。『急進』など高畠が関わった雑誌にも、近代家族イデオロギーに関わる言説は乏しいため、高畠本人にこだわらず、彼と交友のあった幅広い人物に研究対象を拡大する必要性が明らかとなった。現時点では遠藤友四郎、西川光次郎を候補として分析を進めている。 以上の一次資料分析は、新型コロナによる図書館閉鎖の影響もあり、着手途中の状態となっている。 同様に農本アナーキズム系の分析については、白井新平『アナーキズムと天皇制』(三一書房、1980)をはじめとする先行研究の整理を進めた。アナキズムと権威の接続論理を整理し、それがさらに近代家族イデオロギーとどのように接続するかに着目しつつ、整理している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は新型コロナにより、遠隔授業教材作成の負担が大きく、思ったような成果が出なかった。また、国立国会図書館が抽選制となり、調査出張の予定が立たなかったり、あるいは緊急事態宣言により出張を取りやめざるを得ないことも生じるなど、予想外の事態に振り回された。参照すべき文献の購入による収集と分析を前倒しで行うなど、可能な限り影響が出ないように努めたが、やはり調査の順序というものもあり、遅れが出ていることは否めない。
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今後の研究の推進方策 |
このまま今年度もコロナ禍が収束しないようであれば、国会図書館等限られた収蔵先に赴いて閲覧しなければならない一次資料の分析を一定程度断念し、購入により入手可能な、先行研究をもとにした理論構築の方に研究計画をシフトすることも、視野に入れる必要があると感じている。今年度半ばくらいには状況を判断し、必要な研究計画の変更を検討したい。
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