5年間の研究期間の3年めである今年度は、新型コロナウイルスの感染拡大により、国内外での出張がしにくくなり、研究計画に若干の支障をきたしたが、できる範囲で研究を進めた。 LGBTQにまつわるトラブルや困難として、現在注目されているもののひとつに、トランスジェンダー女性への差別行為やバッシングがある。2018年に研究代表者が所属するお茶の水女子大学が日本で初めて戸籍が男性のままであるトランスジェンダー女性の入学を受け入れることを表明して以来、ネット上では賛成反対さまざまな意見が大量に投稿されている。なぜ人はトランスジェンダー女性に偏見を持ってしまうのか、どのように解消できるかを検討するために、トランスジェンダーへの嫌悪を測定する自記式心理尺度の日本語版を作成し信頼性妥当性の検討を行った。そして、これを用いて、よりよいLGBTQについての教育のあり方について実験的検討を行った。この成果は、森・柳川・石丸(2021)として発表した。 LGBTQと同様にスティグマのある集団である精神疾患について、病識をもつための関連要因と効果的な心理教育について文献検討を行いレビューとしてまとめ、LGBTQに対する参考とした。この成果は、伊藤・石丸(2021)として発表した。 LGBTQにまつわる困難やトラブルに関連する根本的な人間社会の捉え方として、バイオサイコソーシャルモデルが挙げられる。極端に心理社会的要因を強調する意見と、極端に生物学的要因を強調する意見とは対立しがちであるが、すべての要因を漏らさずに考慮する人間観について石丸(2020)としてまとめた。
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