研究課題/領域番号 |
18K11897
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研究機関 | 日本赤十字豊田看護大学 |
研究代表者 |
稲垣 惠一 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 非常勤研究員 (70811694)
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研究分担者 |
森下 直貴 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70200409)
村瀬 智子 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 教授 (80210037)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ジェンダー / セクシュアリティ / 老成学 / 互助コミュニティ / 法学 / 同性パートナーシップ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、自己の老いを反省的に捉え返す老成学的な視点から、LGBTAの人々が、どのような互助関係を形成しているのかを明らかにし、それにもとづいて超高齢社会の共助的コミュニティの一モデルを提示することである。本年度は、①LGBTAの人々の実際の生活がいかなるものであるのかを調査するということ、②同性パートナーシップ制度を老成学視点から見、法学・ジェンダー論的に研究するということに重点を置いた。 ①については、すでに計画した調査デザイン、調査方法、調査項目について老成学的な視点から再検討した。また、次年度の分析のための方法の検討も行った。その上で、飲食店とLGBTAの当事者数件を調査した。この調査により、各飲食店の利用者であるLGBTAの人たちが友人や仕事の仲間、家族、パートナーとどのような関係を築いているのかについてデータを得られた。これらは超高齢社会の互助モデルの構築に大いに示唆を与えてくれる。 ②については、ジェンダーと婚姻がどのような関係にあるのかという問題から掘り下げた。これにより、現在の婚姻をめぐる法システムが異性愛・子ども中心主義的であり、個人の互助的視点が欠如しているということが明らかにされた。海外の同性パートナーシップ制度とわが国のそれを比較からによって、近年、わが国で制定された同性パートナーシップ制度の法的効力が骨抜きであるという知見も得た。こうした考察からも現在の婚姻をめぐる法システムが異性愛・子ども中心主義的であるということが再確認された。これらの研究は、個人による互助中心の法システムを考えるための足掛かりとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
飲食店と当事者へのインタビュー調査については、すでに計画した調査デザイン、調査方法、調査項目について老成学的な視点から再検討した。その上で、3地域(東京、福岡市内、那覇市内)と当事者4名のインタビュー調査を実施した。また、次年度以降これらの分析を行わねばならないので、分析方法や項目の選定等を老成学的な視点から検討している最中である。 同性パートナーシップ制度については、 2018年8月の検討会にて婚姻制度とジェンダーの関係について、2019年3月の検討会にて、日本の婚姻の法的効力、国内外の同性パートナーシップの変遷と法的効力についての話題提供を受け、今後の研究方針について検討した。 また、この研究の根幹にかかわる問題として異性愛中心的家族の問題点の検討が必要となったので、産科・婦人科領域でカウンセリング経験を持つ研究者の協力を得、性交痛やメンタル問題等がパートナーシップのあり方と大きな関係を持つことを、2018年8月の検討会およびアレント研究会で検討した。これにより、レズビアンとゲイの出産、子育て、法社会制度のあり方について、批判的に考える材料と展望を得た。 同性パートナーシップの法学的・ジェンダー論的な学際的研究については予定通り順調に進んでいるが、インタビュー調査については、その事前準備に手間取ったため、十分に調査に行けなかったので、研究の若干の遅れがある。そのことが、次年度へ研究費を繰り越すことに繋がっている。しかしながら、おおむね順調に研究は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)インタビュー調査の継続 札幌、仙台、名古屋、大阪、広島調査を行う。また、東京、福岡、那覇についても調査数を増やしたいので、継続して調査を行う。 沖縄の離島に暮らすゲイの書面による個人インタビューの許可を得られているので、早々にも調査を開始したい。これによって、地方と都市部のゲイの人たちの互助関係の違いがある程度は明らかにできるものと思われる。 (2)分析方法の確立 音声データを文字おこしした上で、データをカテゴライズする項目について詳細に検討する。ある程度は、数量的な分析も必要になるものと思われるが、これについても今年度の検討課題とする。 (3)超高齢社会のコミュニティの構築モデルを考える上で、性の社会制度的な問題を広く生命の哲学的な問題とも広くかつ歴史的に関連づけた方がよいという知見を本年度の研究にて得られたので、この方面の研究者を新たに分担者に加えて、性とコミュニティ、法、生命という言葉をキーワードに本研究の基盤を作る。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた調査が遅れているため、旅費等で使用できなかった。 次年度は、本年度実施できなかった調査を実施し可能であるので、このために費用を使用する。また次年度より、調査分析も始まり、現在の予測では、予定よりも費用がかかると見積もられる。
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