研究課題/領域番号 |
18K11898
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
林 葉子 同志社大学, 人文科学研究所, 助教 (60613982)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人身売買禁止運動 / 廃娼運動 / 自由廃業運動 / 公娼制度 / 救世軍 / ベテスダ奉仕女母の家 / 婦人保護 / 売春防止法 |
研究実績の概要 |
今年度は、1900年代に国際的な人身売買禁止運動の中で最も重要な役割を果たした団体の一つである救世軍の日本における活動について、イギリスの救世軍本営に残された史料を検証することによって明らかにし、その研究成果を論文として発表した(「自由廃業運動と救世軍の日英関係」『キリスト教社会問題研究』同志社大学人文科学研究所、第68号、pp.35-60、2019年12月)。 また、救世軍の日本本営のリーダーであった山室軍平の思想と行動について、彼の出身地である岡山県におけるキリスト者の日英交流史に焦点を当てて解説する主旨の講演を行った(「山室軍平と廃娼運動-日英関係史の視点から」於:山陽新聞社さん太ホール、主催:公益財団法人山陽放送学術文化財団、2019年6月6日)。 山室の思想的影響のもとで敗戦後から現在まで性暴力や性搾取の被害を受けた女性たちの救済活動を行い続けてきた「ベテスダ奉仕女母の家」についても並行して調査を行い、その研究成果を広く公開する目的で講演会を企画実施して、講演内容をまとめたブックレットを刊行した(『キリスト教信仰に基づく女性支援の歴史-かにた婦人の村の半世紀』(共著、人文研ブックレット No.64、同志社大学人文科学研究所、2020年2月)。 戦後日本における人身売買問題と関係の深い売春防止法の制定史についても史料調査を行い、その研究成果として「売春防止法制定と地方議会」と題する研究発表を行った(第294回政治思想読書会、於:同志社大学、2019年7月27日)。 今年度は、これらの研究成果によって、近現代日本の人身売買問題の解決のために行われた国際的な社会運動について、その中核の一つであった救世軍の活動についての史実を明らかにするとともに、それが戦後の婦人保護事業に与えた影響に特に焦点を当てて、近現代日本の女性福祉政策の変容と残された課題について考察を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、国際的な人身売買禁止運動と近現代日本の買売春政策に関する複数の重要事項について、研究成果を発表することができた。 また、次年度の研究発表に向けて、ロンドンおよび国内各地での史料調査も実施できたため、次年度以降の準備についても問題はなく、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度までに海外で収集した史料の検討を中心に、1910年代以降の日本における廃娼運動が国際的な人身売買禁止運動からどのような影響を受けていたかという点に焦点を当てて、論文等で研究成果を発表する予定である。 その戦前からの廃娼運動の影響下において売春防止法がどのように制定されたかという点についても、すでに収集した史料をもとに研究発表を行うことを予定している。 2020年度は、新型コロナウイルスの影響により公開講演会や対面の研究発表が行いにくくなることが予想されるため、口頭発表よりも論文の執筆による研究成果の発表に特に力を入れたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
史料調査のための出張にかかった費用が予定よりも若干少なかったために次年度使用額が生じたが、次年度の史料調査のために有効に使いたい。
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