研究課題/領域番号 |
18K11899
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
宮地 歌織 九州工業大学, 男女共同参画推進室, 特任准教授 (40547999)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アフリカ / 高齢化 / 女性 / 健康 / ケニア |
研究実績の概要 |
本研究では、アフリカ地域の女性高齢者ケアをめぐる人類学的調査研究ということで、アフリカ諸国の中でも人口の多い東アフリカのケニアと西アフリカのナイジェリアの二国を対象としている。 本年度については、ケニアにおける調査研究を実施した。対象となる地域は、海岸部のクワレ県であり、3地域から10名づつを選び、合計約30名を対象とした60歳以上の高齢者女性およびその家族に対して調査を実施した。 これら高齢女性や家族に対し、彼女たちの健康状態、住居、経済状態などについても経過を追っている。これら地域は一夫多妻制であり、夫たちが年上のことが多いため、妻たちが寡婦になることが多い。中には寝たきりや認知症らしき女性たちもおり、この地域ではHIV/AIDS感染の多い地域でもあるため、感染者らしき高齢の女性もいた。もともとがケニア国内でも貧困世帯の多い地域であるが、十分な栄養状況ではないことも明らかになってきた。一方で、このような地方の農村であっても糖尿病も深刻となりつつあり、失明に近い状態な女性もいたが、特に治療などは行っていないなどの状況もあった。 アフリカにおいては、そもそも高齢者に関する政策は十分とは言えず、農村にある公的な医療サービス機関は、母子保健を中心としたサービスがほとんどであった。しかし、アフリカにおいても高齢者の数は増えつつあり、WHOのレポートによれば、2050年までに高齢者はアフリカでも現在の3倍の人数になることが予想されている。 本調査は、質的調査であることからインタビューや調査ができる人数が限られているが、今後はHDSS(人口動態登録システム)という疫学的調査研究を長崎大学が現地で実施中であり、そのデータベースと合わせながら、また人口学や医療経済学の研究者と連携しながら、クワレ県における全体像についても把握していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データの収集についてはケニアの方は女性高齢者へのインタビューなど順調に進んでいる。またケニアの研究機関であるKEMRI(Kenya Medical Research Institute)との連携や、ナイロビ大学関係者、また長崎大学のデータベースとのコラボレーションも進めることもできた。また、ナイロビで高齢者調査をしている調査機関や高齢者の人権やサポートを行うNGOとのミーティングなども持つことができた。ケニアにおいても、将来的な高齢化に向けて保健省も関心を持っており、現地の調査にも協力的で概ね順調に進展している。また研究もこの人類学的な調査と連携をしながら、これまでケニアでは調査をあまりされてこなかった、高齢者についての現状を包括的に調査研究する素地ができてきた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はまたケニアにおけるフォローアップ調査を行う予定である。特に、クワレ県ではデータベースをもとにした高齢者の分布図や年齢構成などの情報も入手しながら、本調査のミクロ的な視点と、疫学のマクロ的な視点より、クワレ県の全体像把握に務める。 またケニアにおいては比較的スムーズに調査や各研究者や機関との連携が進んでいるものの、ナイジェリアにおいては、今年度は現地調査を開始する準備を進めていきたい。
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