グローバル化時代のナショナル・アイデンティティとジェンダーについての研究(日米比較)を進めるにあたり、本研究ではナショナリズムの基本構造としての二重構造、すなわち、国家の統治機構や政治制度と、国民が共有する文化や意識という2つの関係性について注目するとともに、グローバル化にともなう影響と変化に焦点を当て日米の比較研究を進めてきた。 最終年度に当たっては、地域デザイン学会において、2022年4月9日(土)「日本の社会課題とアメリカ研究―アメリカ研究から見える日本社会」をテーマに研究報告を行い、多様性と統合の問題について歴史的に取り組んできたアメリカ社会と、その変化について言及した上で、グローバル化の進む今日、日本も直面している多様性と統合の問題について問題提起を行った。さらに、同学会において、2022年11月5日(土)「グローバリズム、政治、企業、倫理」をテーマに、グローバルな企業の経済活動、それぞれの地域の利害や人権、各国家の政治および司法制度、国際機関のユニバーサル基準やガイドライン、等について分析し、国境横断的かつ多層的な観点から、時に矛盾し相互に対立しあっている制度と価値観の状況について研究報告を行った。 LGBTについての議論に代表されるように、ジェンダーの問題は各国の文化的伝統と国家の制度とが関わる問題であり、また欧米諸国の議論の影響も受ける問題である。グローバリズムと国家の統合やナショナル・アイデンティティの問題は、ともすれば二項対立的に、保守とリベラルの立場から論じられる傾向があるが、ユニバーサルに共有すべき問題と主権国家に委ねられるべき問題とを切り分けつつ、多面的な観点から、日本という国家が現在置かれているグローバルな状況を分析し判断してゆくための判断のあり方について研究を進めている。
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