研究課題/領域番号 |
18K11910
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
丸山 里美 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (20584098)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 貧困 / 女性福祉 / 世帯内資源配分 |
研究実績の概要 |
本研究の第一の目的は、女性福祉の運用実態とその問題点を把握し、望ましい女性支援のあり方を提示することである。そのために、女性福祉の運用実態を把握するための調査を東京、大阪において行うとともに、その課題を整理した。また、こうした女性福祉の制度を利用している広い意味での女性ホームレスについて、日本の実態を綴った著書の英語版を刊行するとともに、イギリスの女性ホームレスについて研究している研究者とともに、日本とイギリスの現状と支援の問題点・到達点を比較し検討する、国際共同研究と、その成果を発信するシンポジウムを行った。さらに、韓国の若年女性支援の実践について、論文にまとめた。 本研究の第二の目的は、「世帯のなかに隠れた貧困」について、その実態を把握するとともに、それをとらえるための貧困把握の方法の開発を行うことである。従来の世帯を単位とした貧困把握の方法を乗り越えるために、世帯内部における資源配分に着目した研究について、イギリスと日本における研究成果を検討した。日本ではこの分野の研究は家計研究として行われてきたが、2000年代以降、世帯のなかの貧困をとらえる視点はほとんど研究から失われてしまっているのに対して、貧困研究の蓄積の多いイギリスでは、個人を単位にした新たな貧困把握の方法が開発されていることがわかった。今年度は、こうした検討の成果をまとめた論文を刊行するとともに、同分野に取り組む研究者ととともに研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の第一の目的である女性福祉の実態把握と望ましいあり方の提示については、本年度、厚生労働省において当該分野の検討会がはじまったこともあり、全国的な実態把握と課題の整理が進んだ。またイギリスの当該分野の研究者と共同研究をはじめることができたことから、諸外国の制度の検討も予定どおり進めることができた。 本年度前半はイギリスに滞在していたことから、本研究の第二の目的である「世帯内に隠れた貧困」を把握するためのイギリスの研究状況について、予定していた以上に検討を進めることができた。一方、日本の研究状況については、いまだ十分にイギリスの研究と接続できるほどの把握ができていない。 以上から、総じて本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の第一の目的である女性福祉の実態把握と望ましいあり方の提示については、次年度は特に生活困窮者自立支援事業の実態について調査を行うとともに、問題点のさらなる整理を進める。また、イギリスの女性ホームレス支援の到達点を把握し、共同研究者とともに、日本での導入可能性の検討を進める。さらに、日本において女性福祉を担ってきた売春防止法の改正案を検討するために、他国の売春に関する施策の調査を行う。 本研究の第二の目的である「世帯内の隠れた貧困」の把握とそれをとらえる方法の開発については、次年度はさらに英語圏の研究状況の把握につとめるために、イギリスにおける本分野の到達点を議論する会議に参加する。さらにこうした貧困の実態を明らかにするために、当事者に対する聞き取り調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、イギリスの研究者との共同研究分について、別途、研究費を獲得することができたためである。 本年度は、上記の理由で生じた研究費を用いて、海外調査を進める。日本において女性福祉を担ってきた売春防止法の改正案を検討するために、売春を非犯罪化する法を制定しているオランダとオーストラリア、およびそれとは異なって買春者を犯罪化する法を制定しているフランスにおいて調査を行う。
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