研究課題
電子ビームが誘電体近傍を通過するときに放射するチェレンコフ光を用いた、非破壊ビームプロファイルモニターの原理実証と、本原理を応用したビームプロファイルモニターシステムの構築を目指して研究を行っている。電子が誘電体近傍を通過する際に放射するチェレンコフ光の強度は、放射されるチェレンコフ光の波長と電子のエネルギー及び誘電体と電子の間の距離に依存することが知られている。前年度に中空誘電体として屈折率が1.03のシリカエアロゲルを用いた実験装置を構築しビーム試験を行った。チェレンコフ光の観測には成功したものの、チェレンコフ光の輝度が小さいという課題があったため、本年度は、輝度向上のため中空誘電体の開発を行うとともに、ビーム位置測定精度の検証を実施した。東北大学電子光理学研究センターの試験加速器t-ACTSで原理実証実験を行う場合、観測波長はテラヘルツ帯域となるため、中空誘電体の候補としては、テラヘルツ帯で透過率が高いと考えられるポリメチルペンテン、高密度ポリエチレン、フッ素樹脂等が考えられる。そこでテラヘルツ分光装置 (TAS7500TS)を用いて、これらの透過率測定を実施した。得られた結果から、原理実証実験に用いる中空誘電体としては高密度ポリエチレンが最適であると判断し、測定結果をフィードバックして中空誘電体の設計を開始した。本研究で開発しているビームモニターは、観測したチェレンコフ光を方位角積分し、得られた輝度分布をカップリングファクターと呼ばれる、観測波長、電子のエネルギー、誘電体と電子の間の距離の関数を用いて、ビーム位置を決定する。ビームサイズや中空誘電体内でのビーム位置により位置精度が変化すると考え、シミュレーションによりその影響を評価し、ビームサイズが100μm程度であれば位置精度は既存のボタン電極等を用いたビーム位置モニターと同等程度であることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
中空誘電体の設計に必要なパラメータを得ることができたことと、本測定システムのビーム位置測定精度の見積もりを行い、既存のビーム位置モニターに肉薄する測定精度を有していることが示唆されたため、おおむね順調に進展していると判断した。
高密度ポリエチレン製の中空誘電体を用いて原理実証実験を行う。またこれらと並行して本測定システムをレーザープラズマ加速器(LWFA)のビーム診断に適用するための検討を行う。
ビームの位置とエネルギーを同時に測定できる可能性があることから、その実現可能性を探るために、当初計画していたビーム実験に用いる真空容器の製作を延期したため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は予定通り真空容器の製作に使用する。
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Proc. 10th Int. Particle Accelerator Conf. (IPAC'19)
巻: - ページ: 2536-2538
https://doi.org/10.18429/JACoW-IPAC2019-WEPGW031
https://www.lns.tohoku.ac.jp/research/abpg/