ラザホージウム塩化物の吸着エンタルピー測定に向けて,同族元素であるジルコニウムおよびハフニウム塩化物に対するオンライン等温ガスクロマトグラフィ実験実験を行った。実験は日本原子力研究開発機構タンデム加速器施設にて行った。ラザホージウムを対象とした実験を見据えて,照射室から化学実験室までの核反応生成物の搬送,塩化チオニルによる塩素化,等温クロマトグラフィしたのち測定するための再搬送などの効率測定を主に行った。装置の改良や条件の最適化により,搬送効率45%,塩素化効率55%が得られた。その他の効率等を考慮すると,全効率は8.3%となり,以前の実験条件における効率から3倍以上向上することができた。ジルコニウムおよびハフニウムの等温クロマトグラフィは,予期しないコールドスポットにより理想的な破過曲線は得られなかったが,半減期の異なるハフニウム同位体でわずかな収率さが確認され,クロマトグラフィが行われたことは確認できた。新型コロナウイルス感染症の影響で実験準備などに十分な時間がかけられず,ラザホージウムの等温クロマトグラフィ実験には至らなかったが,実験の可能性は確認できた。 12~15族元素を対象とした気相化学研究については,今年度は12族の水銀を対象とした塩化水銀の揮発挙動の研究を行った。昨年度までに製造法を確立した203Hgを用い,塩酸溶液から塩化物として揮発させることができるか調べた。その結果,塩素化剤を必要とせず,溶液を乾燥させるだけで極めて揮発性の高い化合物が得られることが分かった。しかし,温度に対する揮発挙動がマクロ量とトレーサ量とで異なる結果となり,トレーサ量における化学形の特定には至らなかった。揮発性化合物は得られているので,クロマトグラフィにより化学形を推定することができると考えられる。
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