研究課題
基盤研究(C)
水の中に窒素の短寿命放射性同位体 17N を入射し、ベータ線検出核磁気共鳴法により核磁気共鳴スペクトルを測定した。その結果、水に打ち込まれた窒素イオンは、少なくとも2種類の化学種を形成することを発見した。さらにスペクトルの高分解能化を実現することにより、低周波数側の成分については 17N-1H 間のスピン-スピン結合によると思われるスペクトルの分裂が示された。このことは、水に打ち込まれた窒素イオンが水素との化合物を形成することを強く示唆している。
実験原子核物理学
水や氷へのイオン照射によって形成される化学物質に関する研究は、宇宙での化学進化や生物学的な興味からこれまでにも行われてきた。しかし、従来の照射後に化学分析を行う方法では、微量な生成物質に対し十分な感度を得る事は困難であった。本研究で実施した、水中における放射性同位体 17N の高分解能ベータNMR 分光の成果により、従来の安定核の NMR 法では不可能であった、ビーム照射時の NMR 化学分析の実現に大きく近づいたと言える。