研究課題
2018年度購入を予定していた広波長領域カバー特注光ファイバーが、2019年度に納品された。これにより電子線パルスラジオリス時間分過渡吸収測定システム近赤外光領域の測定において、プローブ光の誘導がファイバーから検出器へダイレクトに行うことが可能となり、近赤外光領域での光学系測定系の高効率集光・高感度測定が達成された。今まで測定が困難だった水溶液における近赤外光領域での過渡吸収のシングルショット測定システムが構築できた。電子線の影響を受け易い生体関連の電子線パルスラジオリシス近赤外領域シングルショット測定に成功した。ナノ粒子分散試料への測定試料の拡充を進めた。ナノ粒子分散系でのパルスラジオリシス過渡吸収測定を試みたところ、ナノ粒子の量子ビーム誘起還元過程の近赤外領域での好感度検出に成功した。金属酸化物ナノ粒子およびその懸濁液の作製、評価も順調に進めている。2018年度大幅改造を行った電子線パルスラジオリシス過渡ラマン分光システムにおいて新規に作製したレーザー光強度自動可変システムを用いて、過渡ラマン測定のプローブ光の強度依存性を確認し、測定過渡ラマン強度とプローブ光強度の最適化を行った。これにより測定試料のダメージの軽減に成功し、プローブ光に対して不安定な生体関連の量子ビーム誘起反応過程に電子線過渡ラマン分光が適用できることを確認した。2018年度構築した遠隔操作による試料ポジション決定機能確認のためwebカメラを試料付近に設置し、ラマン強度と実際の試料位置との関係確認が可能となった。電子線パルスラジオリス時間分過渡吸収測定システムにおいて、検出波長領域を赤外光領域に拡張するための光学および測定システムの新規作成を行った。現在モデル化合物を用いて測定の最適化を進めている。
1: 当初の計画以上に進展している
新たに電子線パルスラジオリス時間分過渡吸収測定システムにおいて、検出波長領域を赤外光領域に拡張するための光学および測定システムの新規作製を行った。1200-2600cm-1の領域で電子線パルスラジオリシス過渡赤外光吸収測定が可能となり、過渡ラマン測定と併せ、量子ビーム誘起反応における短寿命活性種の振動分光の領域を大きく広げることができた。当初の計画以上に進行している。今まで紫外領域にのみ過渡吸収を有する短寿命活性種の過渡吸収測定は困難であったが、過渡赤外吸収測定の導入によりこれらの検出も可能となり、新たな量子ビーム誘起反応の発展が期待できる。
作製した金属酸化物ナノ粒子の懸濁液、ゾルゲル、高分子材料、生体模擬材料に基質の分散を行い、不均一反応場における量子ビーム誘起反応初期過程の評価に加え、基質による量子ビーム誘起反応活性中間体の評価を進める。金属酸化物ナノ粒子における電子線パルスラジオリシスにより注入した電子の過渡吸収を近赤外光領域での測定により測定を行う。電子線パルスラジオリシス時間分解ラマン分光による不均一反応場量子ビーム誘起活性中間体の振動構造から不均一反応場が活性種に及ぼす影響を分子振動レベルで明らかにする。電子線パルスラジオリシス時間分解赤外光吸収測定での過渡吸収測定を併せて行い、ラマン不活性振動部位における振動構造の解明を進める。
平成31年度購入だった特注ファイバーの納品が令和1年度になり、それに関連する消耗品の購入が遅れた。今年度光学部品の購入等を予定している。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
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