昨年度改良した電子線パルスラジオリス時間分紫外~近赤外領域過渡吸収測定システムにおいて構築された1000 nmの近赤外領域までのマルチチャンネルによる測定を本年度進めた。電子線の影響を受け易い不均一系生体試料の電子線パルスラジオリシス近赤外領域シングルショット測定が順調に進んだ。電子線パルスラジオリスにおける生体系試料の近赤外領域測定で排除することができない溶媒の水の影響も光学系・測定系の高度化により回避することができた。1800 nm付近まで測定が可能となった。紫外~近赤外領域における1検出器測定のためのフィルター切り替えの遠隔操作も可能となり、重量扉開閉を行うことなく大幅な測定時間の短縮化が達成された。 電子線のナノ粒子分散試料への測定試料の拡充を進めた。酸化チタンナノ粒子およびその懸濁液の作製、評価を進めた。ナノ粒子サイズが5~10 nmの分散液を安定的に作成することができ、透過型電子線パルスラジオリス時間分紫外~近赤外領域過渡吸収測定システムでの測定が可能となった。分散水溶液においても1000 nm付近まで近赤外領域までのマルチチャンネルでの測定が可能となり、水和電子の酸化チタンナノ粒子への電子付着現象の直接観測も可能となった。引き続きパルスラジオリシス拡散反射過渡吸収分光の光学系の構築を進めている。シングルショットでの測定が達成されず、繰り返し測定による試料の劣化が問題として残っている。 計算機用PCにおけるGaussian計算による量子ビーム誘起活性種の最適化構造の決定、吸収スペクトル、振動モードの帰属も順調に進んでいる。電子線パルスラジオリス時間分過渡吸収測定システムにおいて、検出波長領域を赤外光領域に拡張するための光学および測定システムの新規作製も進んでいる。現在モデル化合物を用いて測定の最適化を進めている。
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