素粒子ミュオンが原子に捕獲されると、ミュオン特性X線を放出する。本研究では、ミュオン特性X線の放出確率が、ミュオンを捕獲する原子の化学状態によりわずかに変化することに注目し、化学状態分析を行うことを目的に実施した。鉄のいくつかの化合物に対して、ミュオン照射を行い、化学形によるミュオン特性X線強度の違いを明らかにした。その違いを用いて砂鉄の化学形態を調べ、分析の精度について評価した。また、空気中における酸化反応をミュオン特性X線の測定から追跡できることを示した。本研究成果により、近年応用研究の進展が著しいミュオンによる非破壊分析において、化学形態の分析という新しい特性を付加することができた。
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