研究課題/領域番号 |
18K11931
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
金 秀光 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (20594055)
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研究分担者 |
許斐 太郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (20634158)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 長寿命 / 高輝度 / フォトカソード |
研究実績の概要 |
フォトカソードはレーザー光による光電効果によって電子ビームを生成する電子源である。この電子源は、大電流、短パルス、低エネルギー幅の電子ビームを生成できることから、加速器、電子顕微鏡などに注目されている。特に、電子顕微鏡によく使われている熱電子源や電界放出電子源ではパルス電子ビームが生成できないことから、動的な過程観察を目指す電子顕微鏡技術にはフォトカソードの導入が不可欠である。 今までの、フォトカソード材料にNEA-GaAsを用いている。電子の引き出しに必要なNEA表面はチャンバー内の残留ガスの影響を受けやすいため、動作環境が~10-10 Paの極高真空であることと、耐久性が低い。取出電流10 μAで、使用寿命は20時間程度と短い。 短い寿命問題を解決するために、耐久性の高いマルチアルカリ材料(CsK2Sb)に注目した。CsK2Sb系は真空準位が2eV程度であるため、532 nmの励起光(hν: 2.33 eV)で励起可能であることと、短パルスと低エネルギー幅の電子ビームが生成できある。加えてNEA-GaAsカソードより耐久性が高いことから、加速器によく使われている。米国のJ-Labなどでは、取り出し電流2 mAで100時間以上の連続運電することに成功している。取り出した電荷量で換算するとNEA-GaAsの1000倍である。 本研究では、CsK2Sb材料を用いて、裏面照射型フォトカソードを開発し、電子ビームの超高輝度・短パルス・低エネルギー幅を保ちつつ、100倍以上の寿命を実現する。フォトカソード作製用のチャンバーは作製、組み立て済であり、新しい電子源の作製は目前である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、長寿命、超高輝度・短パルス・低エネルギー幅の電子ビームの生成を目的にしており、ZnSe基板上にKCsSb活性層を成膜して、フォトカソードを作製する予定である。 本研究の第一歩は、蒸着用の真空装置の作製である。装置の真空度はフォトカソードの性能を左右する。装置の真空度は、チャンバー内壁でのガス放出量と排気ポンプの容量で決まり、到達真空度の計算を経て、チェンバーの材質、サイズを決め、またポンプの排気量と種類を決めた。 また蒸着源は試料より近い場所に配置すること大事であり、3種類の材料を一つのホルダーに設置するように設計を行った。 以上に述べた、チェンバー、サンプルポンプは業者に依頼して作製を行い、またポンプなどは業者に依頼して購入している。2018年度にすべにの部品が揃っており、またチェンバーの組み立ても予定通り終わっている。
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今後の研究の推進方策 |
装置の真空度はフォトカソードの性能を左右する。装置のベーキングを行い、CsK2Sbカソードの作製に必要な1×10-8 Paの超高真空度を達成する。 K、Cs、Sbの蒸着源とサンプル基板との距離も、作製時間の短縮に大事である。蒸着源をサンプル基板より近い場所に設置する。 その後、ZnSe基板の洗浄と酸化物除去処理を行い、チャンパーにインストールする。 基板洗浄には、申請者が確立したプロセスとおり行う。 次に今まで知られている手順によりK、Cs、Sbを蒸着し、電子ビームの生成を確認し、最適な蒸着条件を探索する。 最終的に、ZnSe基板の前処理に注目し、蒸着プロセスを最適化して、10%以上の高量子効率(取出電子数/励起光子数)を実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ビーム生成用のレーザーを次年度に購入することになった。
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