研究課題
「研究目的」本研究では、使用寿命が短い負の電子親和力(NEA)表面を持つGaAsカソードの代わりに、マルチアルカリ材料(CsK2Sb)を新しく導入する。また、CsK2Sb材料を用いて、裏面照射型フォトカソードを開発することで、電子ビームの超高輝度を実現しつつ、長寿命を実現する。「研究実施計画」CsK2Sb系はバンドギャップは2eV程度であるため、532 nmの励起光(hν: 2.33 eV)で励起できる。また、532 nmの励起光の透過を考え、バンドギャップが2.7 eVであるZnSe基板を導入した。CsK2SbはGaAs基板やSi基板上によく作製する。ZnSeは格子定数などのパラメーターがGaAsと近いことから、ZnSe基板上にCsK2Sbが成膜できる。CsK2Sbを作製する前のZnSe基板の表面処理は、カソード作製のキーポイントである。申請者はいろいろな薬品を試し、最終的にHF処理がZnSeの酸化膜を除去に有効であることを見つけた。また、表面処理後真空チェンバ―に導入し、500℃まで加熱すると、表面不純物を除去され、カソードの作製への影響が小さいことが分かった。申請者は、ZnSe基板上にCsK2Sbを蒸着法で作製し、1~2%の量子効率を得ることに成功した。ZnSe基板の導入は世界初である。また、寿命もNEA表面を持つGaAsカソードより長いことを見事に確認した。本成果は新型電子源の開発であり、電子顕微鏡、リソグラフィーなどへの応用が期待される。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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