研究実績の概要 |
2019年度は主著として、これまで行ってきたリン脂質水和物の中性子準弾性散乱の結果をまとめて、1報のMini Review を執筆した。また、リン脂質水和物に塩を添加したときの水のダイナミクスを中性子準弾性散乱で調べた結果を一報出版した。この中で、添加したイオンの種類によって、リン脂質と協働的に運動する水の量が変化することを明らかにした。この結果は、ナノ空間中の壁の親水性とダイナミクスに相関があることを示す結果である。一方で、相互作用が小さい自由水などは、壁の性質(塩添加効果)をあまり受けていないことも明らかにした。この結果は、細孔中の水が界面の化学的な性質による影響を受けることを示すものである。 他にも、In-situで水蒸気圧力が制御可能な中性子準弾性散乱実験装置、高圧装置に関するProceedingsを2報投稿した。これらのうち、高圧装置に関してはAcceptとなった。In-situで水蒸気圧力が制御可能な装置に関する論文も、一度修正を行い、近日中にAcceptとなると期待され、来年度には成果として公開できるものと思われる。他にも、分子動力学に関連した論文を共著者として一報(T. Mizuguchi, et al. Molecular Simulation, 45, 1437 (2019))を出版できた。その中でも、界面の効果について議論を行うことができた。この成果は、自分の分子動力学計算の習熟に役立つものとなった。
|