研究課題/領域番号 |
18K11933
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
竹谷 篤 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 副チームリーダー (30222095)
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研究分担者 |
片山 英樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 分野長 (10354218)
若林 泰生 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 研究員 (80447359)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中性子イメージング / 鋼板腐食 / 定量評価 / 小型中性子源 |
研究実績の概要 |
四面を海洋で囲まれ湿潤な気候を持つ我が国では鉄鋼材料の腐食による劣化・損傷が社会の大きな課題である。塗装による腐食対策コストは年間4兆円であり、このコストを下げるためには効果的な防食対策やメンテナンスが必要である。このためには塗膜下で進行する腐食の観察が必須である。しかしながら厚い塗膜下で生ずる腐食現象であるために、従来からの手法では得られる情報に限界があった。本研究では塗膜下腐食の主成分であるオキシ水酸化鉄(FeOOH)中の水素に着目し、水素に敏感な反応を示し、かつ鉄に対する透過度が高い、熱中性子を用いて、定量的な腐食のイメージング手法を開発し、実際に塗装鋼板が使われる状態での腐食が成長していく様の時間推移を高空間分解能かつサンプル全体を臨む広視野で観察し、腐食の成長速度から防食対策の時期を左右する塗装鋼板の寿命予測や、効果的なメンテナンスに必要な塗装の下地調整の最適化を行えるためのデータを提供する。 2018年度では、腐食に含有する水素量を中性子線透過度法で定量化するための検量線測定の実験を行った。厚さと水素含有量が解ったポリイミド薄膜およびマイラー薄膜で腐食中の水素を模し、これを鋼板に貼り付けた模擬鋼板腐食サンプルを用意し、熱中性子での透過画像を撮像した。鋼板のみの透過画像と、薄膜を貼り付けた透過画像の差分をとることで、薄膜のみの透過度を得ることができる。薄膜の厚さを変えて透過画像をえることで、厚さ方向の分解能を得ることができた。理研小型中性子源を用いた測定で、サンプルあたり、40分間の中性子露光時間で、画素1mm四方の撮像で、厚さ方向分解能の測定を行った。詳細については解析を続行しているが、鋼板を屋外暴露した場合の、年間減肉量の1/10である10um程度の腐食に関して見えるだけの厚さ分解能をえることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中性子は水素や鉄等の物質での吸収より、散乱される確率が高く、このためサンプルと中性子イメージング検出器間の距離によって、測定される透過度が変化する。このため、サンプル-検出器間の距離を再現性よく一定に保持するサンプルホルダーを設計・制作した。このサンプルホルダーに、6mm厚の鋼板に腐食に模したポリイミド薄膜とマイラー薄膜をはりつけ、理研小型中性子源で透過度の測定を行った。鋼板のみのサンプルと薄膜を貼り付けたサンプルの透過度の差分をとることで、薄膜のみの透過度を求めた。薄膜の厚さを変えたものを測定することで、透過度と薄膜厚さの検量線をえることができた。1mm四方の大きさの撮像ピクセルに対して、厚さ方向の分解能10um以下(水換算相当)が得られた。 空間分解能を向上させるために、中性子の角度発散を1/100radに抑えるソーラーコリメーターをサンプル上流に挿入して透過度を測定したが、挿入した場合の透過度と差があることが分かった。これについて説明することがまだできていない。
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今後の研究の推進方策 |
ソーラーコリメータ挿入のあり、なしでの透過度の差については、放射線トラッキングプログラムでのシミュレーションを用いて、その原因についてつめると同時に、同じ条件で測定を行い、検量線を得ることにする。 当初の予定では、電流腐食を用いて、定量化された腐食サンプルを中性子イメージングで透過度を測定し、透過度と腐食厚の関係の定量化の精密化を行うことを考えていたが、腐食厚を直接、膜厚計で測定することによって、進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費に関しては、東京都内で行ったため、支出しなかった。 またサンプルホルダーを研究所内部で制作したために、予算額より少なくなった。次年度は腐食を測定するための膜厚計とその駆動系の制作に充てる予定である。
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