研究実績の概要 |
わが国では鉄鋼材料の腐食による劣化・損傷が社会の大きな課題である。効果的な防食対策やメンテナンスが必要で、このためには塗膜下で進行する腐食の観察が必須である。本研究では塗膜下腐食の主成分であるオキシ水酸化鉄(FeOOH)中の水素に着目し、水素に敏感な反応を示し、かつ鉄に対する透過度が高い、熱中性子を用いて、定量的な腐食のイメージング手法を開発し、実際に塗装鋼板が使われる状態での腐食が成長していく様の時間推移を高空間分解能かつサンプル全体を臨む広視野で観察するデータを供することを目標として掲げて研究をおこなっている。 これまでサンプルの定量化を行うために、理研小型中性子源を用いて、高分子シートを用いて測定を行い厚さと透過度の相関を求めてきた。水に変換するために、GEANT4を用いてシミュレーション計算をおこなったが、実験結果と計算に明らかな違いがみられた。現状のシミュレーションによってははこれまでの測定結果が説明できなかった。
これまでの測定ではポリイミド性の粘着テープを使用していたが、粘着材部分の評価ができなかったが、これを粘着材のない純粋なポリイミドシートを入手して実験をおこなった。水を石英セル(厚さ0.1mm, 0.2mm, 0.5mm)にいれたサンプルを6mmの鋼板にはりつけて、透過イメージング測定を理研小型中性子の熱中性子源と冷中性子源を用いて行った。実験条件は40uAの平均陽子電流で20分間の露光時間で、ポリイミドと水の換算係数を得るとともに、1mm平方の面積において1σの誤差範囲で水換算で7umの分解能で厚さが測定できることを示した。 高分子シートと水に対しての散乱カーネルの有無のシュミレーションを計算を行い、散乱かネールありのもののほうがデータをよく説明していることがわかった。
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