研究課題
本研究は、多重極電磁石がもたらす非線形集束により、従来法では成し得なかったビーム強度分布の変換を実現することを目的として実施した。主として中空状強度分布の形成・制御を対象とした。強度分布や形状は、4極電磁石のみならず、用いる2台の8極電磁石の磁場勾配の大きさに依存して多様に変換可能であることを実証するとともに、その比率を一定に保ちながら変化させることで、標的位置での断面形状はほぼ同一のままビームサイズが調整できることを見出した。これは中空ビーム等の照射野を効率的に調整できるという点で実用上重要な成果である。また、8極磁場による3次の非線形力を用いた強度分布変換に対して、次数の異なる6極電磁石を用いる場合も検討した。6極電磁石の磁場分布の対称性から予想されるように、ビーム断面形状に3回対称性が現れたことに加えて、2台の6極電磁石の磁場勾配の組み合わせによっては、概ね楕円形の断面形状で強度分布を中空化できることを見出した。本成果は、最低次(2次)の非線形集束による強度分布変換を明らかにしたものであり、ビーム物理として学術的意義がある。非線形集束によるビーム形成では、ベータトロン振幅の大きな粒子はより強い集束・発散を受け、真空ダクトに当たって失われることが問題となる。加速器への入射の際の適切なビーム整合により、このビーム損失を低減できる可能性がある。そこで、サイクロトロン入射ラインにおいてビームの位相空間領域を制限・制御しビームレットの振る舞いを調べたところ、非線形集束により中空状分布を構成する部分と失われる部分で分布に差異があることが分かった。この結果は、中空状ビームとなる位相空間領域に重点的にビームを入射させるビーム整合が可能であることを示唆するもので、これにより意図しない放射化の低減やビーム利用効率の向上が期待できる。
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