研究課題/領域番号 |
18K11936
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
越川 博 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主任研究員(定常) (00354936)
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研究分担者 |
臼井 博明 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60176667)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イオン穿孔 / ナノコーン / 光触媒 / 二酸化チタン / ポリイミド / テンプレート / 焼成 |
研究実績の概要 |
太陽光エネルギーを利用する場合、表面形状をナノコーンアレイにすると、表面反射率が低下して吸収効率が高くなる。本研究では、イオン照射と化学エッチングの組み合わせにより、高分子膜にイオン一つの軌跡に沿った円すい形状のナノ穿孔を形成し、これをテンプレートとした光触媒ナノコーンアレイの作製技術を確立し、光吸収率と反応効率の高い水素製造膜の開発をめざしている。昨年度は、電極として用いるPtのスパッタ蒸着と酸化チタンの電気泳動電着を組み合わせた方法を検討したが、Ptに導電性を付与するために全面を積層させてしまうことで酸化チタンの被覆率が低下したため、今年度は、以下の実験を実施した。 ポリイミド膜(東レ・デュポン製カプトン, 膜厚25 μm) を2枚重ねたターゲットに、127 MeV 40Arイオンを3.0×10^7 ions/cm^2のフルエンスで照射した。照射イオンが途中で停止した2枚目の膜を60℃の次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)溶液でエッチングした。次に、酸化チタン懸濁液を穿孔膜に滴下し真空乾燥によって穿孔の開口部から内部に酸化チタンを堆積させた。その後、400℃で1時間焼成し結晶化させた。NaClO溶液で再度エッチングし、穿孔膜を除去した。TiO2ナノコーンを走査型電子顕微鏡(SEM)により、また穿孔膜- TiO2複合体の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により形状観察した。 焼成前後の穿孔膜- TiO2複合体のTEM観察により、穿孔形状に沿って酸化チタンが形成され、また焼成で変形することなくコーン形状を維持していることが確認できた。ポリイミド膜除去後のSEM観察により、表面形態が平滑で穿孔形状が一致した底面直径1.0 μm、高さ2.4 μmのナノコーン構造が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化チタンのみのナノコーンの作製に成功し、その成果について学会発表も行っており、研究は予定通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
作製したナノコーンアレイに水中で疑似太陽光を照射し、水素製造実験を行う。水素発生量から変換効率を算出し、ナノコーンアレイ形状の最適化及び光触媒材料の最適化を検討する。 構築した光触媒ナノコーン構造の機能を高めるため、有機色素を吸着させ、色素増感効果を検討する。光吸収効率が高く、光触媒への電界分離・移動が容易であ り、太陽光スペクトルとの親和性に優れ、ナノコーン構造への吸着性に優れた色素を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
水素製造実験を次年度にしたため。次年度は、実施できなかった水素製造実験に充当する。
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