研究課題/領域番号 |
18K11942
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
新田 清文 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (00596009)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コヒーレント回折法 / X線吸収分光法 / タイコグラフィー法 |
研究実績の概要 |
本研究では1 nmの空間分解能と100μmの視野をもつ顕微X線吸収分光ナノイメージング法(タイコグラフィXAFS法)の計測・解析システムの開発を行い、物理・化学反応状態下にある機能性メゾ・ナノスケール材料物質やデバイスに対する化学状態・局所構造の変化の様子を、非破壊その場ナノイメージングにより追跡し、材料物質/デバイス内で空間的に不均一に起こる反応のメカニズムを解明することを目的として研究開発を行った。 本年度はタイコグラフィXAFS法の計測を行うにあたり必要となる真空チャンバーの設計及び開発をおこなった。本真空チャンバーはタイコグラフィー計測においてデータの質を担保する重要な要素であるため、慎重に吟味を重ねた。試料をマウントする真空対応ステージについては、先行実験時に使用していたステージのグリスが試料を汚染することが分かっていたため、汚染の起こらない機種を選定しており、当該ステージを設置するようなデザインを採用した。また真空チャンバーを含めた計測系の構築の最適化のため、計測ルーチンの構築を行った後、予備的な計測を行った。その結果、本研究課題において行うタイコグラフィXAFS計測における実験条件を決定することができた。また未設置の実験装置等においては機種選定及び設計を行い、順次購入、設置する準備が完了した。 また本研究課題で使用する解析プログラムについても単一のエネルギーにおいて使用するイメージング解析部分の開発を行い、模擬的なタイコグラフィーイメージに対して位相回復計算が有効に実施可能なことを確認した。現在は予備的な計測において得られたデータに対しての位相回復計算に向けて、質の劣るデータの処理方法等、実際のデータを想定したプログラム部分の開発を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は計測システムの検討、設計及び開発及び解析プログラムの開発を行う予定であった。研究実績に述べたように計測系の検討については概ね完了し、導入、設置に向けての準備が進んいる。開発プログラムについても順調に進捗しており、実際実験において得られる模擬的なデータに比べて質の劣るデータに対するデータ処理等の開発及び実際の実験データに対するデータ処理のテストを行っている。 しかしながら、実際に実験を行う予定であるSPring-8 BL37XUにおける予備的な計測において当該ビームラインの光学素子及び使用するX線の質に不足がみられたため、想定よりも少ない開発用の実験データしか取得していない現状である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は現在までの所、概ね順調に進捗しており、本年も基本的には申請書に記載した内容の通り、課題の内容の実施を進めていく予定である。 進捗状況の稿に述べた通り、本研究課題で整備を進めている実験装置及び解析プログラムについては予定通りの整備状況であるが、本課題において最重要とも言えるX線の質に対する疑問点が浮上してきたため、今年度はまず実験を実施予定のBL37XUにおいてタイコグラフィー計測に対して必要十分な質のX線を測定試料に導くことを第1優先で行っていく。並行して計測系や解析プログラム等のX線を用いないでも開発が行える部分は実際の配分されるビームタイムまでにオフラインで完了を目指し、テストチャートなどの構造が既知の試料に対してのタイコグラフィー計測を行い、良質なデータ取得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画において重要な要素である、真空チャンバーの設計が当初の予定よりも遅れたために、真空チャンバー内部の試料ステージ周囲の治具など、アクセサリー類の設計及び選定が遅れ、年度内の納入に間に合わなかったため、次年度の実験日程前の購入及び設置へと予定を変更したため。本研究課題によって構築されるシステムでの実験日程には間に合う予定であり、計画への影響はない。
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