研究課題/領域番号 |
18K11946
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
熊澤 貴之 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (30364102)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 公共ホール / 避難所転用 / 避難所運営体制 / 空間機能 |
研究実績の概要 |
研究の目的は,災害時における公共ホールの避難所転用のための空間機能と運営体制を解明し,災害レジリエンスを高める避難所転用デザインマネジメントの展開策を確立することである. そこで,被災地における避難所機能分析より,公共ホールの避難所運営と空間転用の役割を解明し,「空間転用」「避難所間広域連携」「自治体/コミュニティ運営の融合」から成る避難所転用デザインマネジメントの展開策を開発し,公共ホール及び市民より展開策に対する評価を分析する. 本年度は,施設管理者の避難所運営に対する意識の傾向が不明であることに焦点を絞った.公立文化施設では特殊な空間機能と施設側の事情を十分に理解した上で,避難所を運営する視点が不可欠で,特殊な空間機能の活用に精通した施設管理者や施設スタッフが避難所生活をバックアップする体制を構築する必要がある.事前に意識の傾向を把握できれば,避難所転用の際に大いに役立つ.そこで,施設管理者の意識と避難所転用の受容意識の因果関係を明らかにするため,避難所運営に関する施設管理の実態を把握した上で,施設管理者の意識構造モデルを全国の公立文化施設に対するアンケート調査に基づく共分散構造分析により検証した. その結果,以下が定量的に明らかになった.1)災害自己対策傾向は,避難所転用受容に避難所運営準備傾向を介し,ポジティブな間接効果を持った.2)災害自己対策傾向は,避難所転用受容に社会貢献傾向を介し,ポジティブな間接効果を持った.3)避難所転用受容は災害自己対策傾向にポジティブな直接効果を持った.4)災害自己対策傾向,社会貢献傾向,避難所運営準備傾向と避難所転用受容を結ぶパスは一方向の流れで持続的に循環しながら,螺旋状に上昇する因果関係を持った.5)これらの因果関係は,特に,築年数40年未満の施設と避難所転用経験がない施設の管理者の意識構造モデルに強く適合した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,避難所運営に関する公立文化施設(公共ホール)の施設管理者の意識構造を定量的に明らかにすることができたため,本研究はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
最終的には,避難所転用しやすい公共ホールの空間デザインについて知見を収集することが狙いである.そのため,公共ホールにおける本来の空間機能や空間機能の転用に関して研究を推進する予定である.また,近年,複合機能を持つ公共ホールの建設が増えてきたという実態がある.公共ホールが単独で立地している場合と複合施設として公共ホールが設置されている場合では,空間の役割が異なることが予測される.そこで,今後,複合機能を併せ持つ公共ホールの空間機能について着眼する予定である.
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