本研究では,被災地における避難所の機能の分析により公共ホールの避難所運営と空間転用の役割を導き,公共ホールの施設管理者からの避難所転用に対する意識構造と公共ホールの利用者と公共ホールの近接性を検討した.令和2年度はこれまで実施してきた研究成果をまとめた.本研究の成果は以下のようになる. 平成30年度は,避難所運営に関する施設管理の実態を把握した上で,施設管理者の意識構造モデルを全国の公立文化施設に対するアンケート調査に基づいて把握した. その結果,災害自己対策傾向は避難所転用受容に避難所運営準備傾向を介して効果があり,災害自己対策傾向は避難所転用受容に社会貢献傾向を介して効果があった.避難所転用受容は災害自己対策傾向に直接効果があった. 令和元年度は,公共ホールの利用者による避難所転用の受容を検討するため,利用者と公共ホールの転用に関する近接性に及ぼす要因を定量的に検討した.その結果,公共ホールの公演時と講演時外における空間機能の転用が積極的に実施されていた.そこで,公演時外の利用が活発な施設を事例として抽出し,その施設の利用者を対象にアンケート形式による意識調査を実施した.得られた結果に基づくと,公演時外に施設の併設諸室における活動利用が公演時の来訪意欲の向上に繋がり,利用者と公共ホールの近接性を高めることを確認した.利用者と公共ホールの近接性は避難所転用を円滑にするという示唆が把握され,利用者と公共ホールの近接性の向上は公共ホールの避難所転用にとって重要であることを示した. 以上の知見から,災害時における公共ホールの避難所転用のため諸条件を施設管理者と利用者の評価に基づいて把握した.これらの要因を効果的に組み合わせて活用し,避難所転用デザインマネジメントを実施するべきである.
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