研究課題/領域番号 |
18K11950
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
河原 雅典 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (30389960)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 搬送具 / 背負子 / 背負梯子 / 人履運搬 / 地域住民 / 防災 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,高齢社会を迎えた地域住民が災害時に自力で移動困難者の搬送ができる仕組みを地域住民自らの手でつくることである.この研究は,単なる製品開発ではく,自作可能なものづくりを通して災害に強い地域づくりを行うものである. 研究の第一段階として,高性能で安全性の高い搬送用背負梯子の研究開発を実施した.災害時に人間を搬送する道具として,とくに車輪が使えない場合,担架で運ぶか,背負って運ぶか,となる.本研究では,一人の人間がひとりの人間を搬送する背負運搬による搬送方法を対象とした.災害用に大人搬送用のおんぶ紐型背負運搬具が考案されている.しかしこれは装着が困難であること,装着後の立ち上がりが困難であること,移動中に休息がとりにくいことなど,問題が多い.この問題を解決するために背負梯子を活用する研究を行ってきた.この搬送用背負梯子は長い脚部をもつ.これは使用する地形,使用者の身体寸法に応じて長さを変えなければならない.また着脱式になることが望ましい.それらの機能を満たすように制作すると現段階では重量が大きく,運搬することの作業負担が非常に大きいため,使用者が限られる. そのため初年度は,軽量化を第一目的とした研究を行った.当初使用する素材は調達と加工の用意さから鉄としていた.素材は変更せず,部品の形状と寸法を見直したところ,当初10.78kgであったものが9.96kgに軽量化された.続いて素材を見直した.本研究では地域住民が自作できることが条件となるので,高度な技術を持っていない人でも加工や組立ができること,誰でも材料が調達しやすいことが条件となる.この条件を満たす素材を新たに選定し,それを利用した各部の部品の形状と寸法を見直した.その結果,6.3kgにまで軽量化できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
背負式搬送具の軽量化のための素材として,マグネシウムを利用する計画であった.しかしパイプは調達できるものの,ジョイントパーツが市販されていない.鉄製ジョイントパーツとマグネシウムパイプの組み合わせも検討したが,アルミ製ジョイントパーツとアルミ製パイプの組み合わせでも十分に軽量化できるため,後者を選択した.本研究では地域住民が自作する仕組みをつくるため,材料が調達しやすいことが条件であるからである.研究計画上購入が予定されていた素材を変更し,目的である軽量化を進めている.いっぽう,背負式搬送具脚部の長さ可変の仕組み,着脱の仕組みの設計が遅れている.アルミ製ジョイントパーツ,およびパイプの組み合わせのなかで,解決策を検討中である.
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今後の研究の推進方策 |
現段階での搬送用背負梯子の強度計算を行う予定である.それに基づき設計の見直しを行う.また背負梯子の脚部に,長さ可変の仕組みと着脱の仕組みを加える. それらの細部の設計が確定後,自作のためのマニュアル作成に移行する.地域ごと,利用者ごとに設計仕様を変更できる仕組みを盛り込む.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画にしたがい1年目に搬送用背負梯子の軽量化に取り組んできたが,背負梯子脚部の設計が完了していない.この脚部は使用する地域の地形,利用者の体格に合わせて変更可能であるとともに着脱式とする必要がある.この部分を次年度に研究実施する.次年度に当初予定していた搬送用背負梯子の自作マニュアル作成は予定通り行う計画である.
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