研究課題/領域番号 |
18K11957
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
原田 泰 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (00272188)
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研究分担者 |
宮田 義郎 中京大学, 工学部, 教授 (00239419)
横溝 賢 八戸工業大学, 感性デザイン学部, 准教授 (10707243)
元木 環 京都大学, 学術情報メディアセンター, 助教 (80362424)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | デザイン実践の記録 / デザインプロセスの視覚化 / デザイン態度の変化 / 一人称研 / 地方都市型デザイン / ナラティブ |
研究実績の概要 |
今年度は、これまで続けてきた各研究メンバーのデザイン実践について、どの様に記述して社会実践型デザインラボに蓄積していくかについて、研究会という形でディスカッションを続けてきた。また成果の蓄積のための試行として、年度内発行を目標に日本デザイン学会特集号を利用し、本研究プロジェクトの中間発表的に成果を社会化することで、最終成果のかたちを模索することとした。 研究メンバーは、函館、八戸、豊田、京都でそれぞれの地域と関わるデザインプロジェクトを進めている。これらの活動内容を記録した資料を持ち寄り、複数回にわたる研究会を開催した。類似のデザインテーマの実践者や研究者を招待してディスカッションを行い、本研究メンバー自身のナラティブが必要である、との示唆を得て、特集号編集を進める運びとなった。 4月、6月、8月、9月、10月、12月と複数回にわたって開催した研究会の前後日には、研究メンバーによる検討会、編集会議も実施し、デザイン研究成果の社会化に向けて議論を深めることができた。 研究メンバーそれぞれの成果は以下に示す。 原田は自身のデザイン実践の記述方法について、様々な観点から検討し、一般に共有されている「デザイン手法」のようなフレームワークでは体得・実践できない、デザインするひと本人の経験や学びに焦点を当てたナラティブの方法を試みた。横溝、元木は、自身の実践からそれぞれ自身のデザイン活動のパターンを取り出し、持続的なデザイン活動に応用できるビジョンや態度を言語化する試みを行なった。宮田はこれらの実践に加え、自身の豊田での実践および、海外の教育関係者との連携により、本研究が捉えようとしている「デザインすること」の原理の追求と理論化を試みている。 これら、各研究者の関心やプロジェクトとしての到達点を、デザイン学会特集号として閉じることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の大きな成果は、日本デザイン学会デザイン研究特集号「社会実践のデザイン学」(2020年3月31日発行)を取りまとめたことである。この特集号発行を中期目標としてプロジェクトを進めてきたことで、具体的な成果を手に入れることができた。これまでデザイン研究は、成果物の成り立ちや評価、デザインするための手法などが研究成果の中心だった。しかし、本研究ではデザインする人の活動内容に焦点を当て、なぜ、どうやって、そのデザインを実現したのかを外在化することを目標としている。表現されたプロセスから読み取れる『デザインするための「知」』をステークホルダーやコミュニティメンバー、さらに後継者などに伝え、将来的に誰もがデザインする社会を志向するプロジェクトとして、方向性も定まってきている。
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクト最終年度として、(1)社会実践型デザインラボに蓄積すべきデザイン実践記録の形についての表現方法を示すこと、(2)これまでの実践を総括して、21世紀の地方(都市)型デザインのあり方とその実践方法について、理論化を試みること、(3)このプロジェクト自体の活動内容を外在化し、これまでのデザイン研究では捉えられなかった「デザインすること」の知識や技術の共有、伝承についての実績を作ることを目指す。具体的な実践としては、研究メンバーと関わりのあるデザイン研究者(修士、博士化帯の学生)に社会実践柄デザインラボの活動やその成果物を読み解いてもらい、その解釈や応用を試みてもらう。もうひとつは、デザイン学会特集号「社会実践のデザイン学」の続編となる様な資料(メディア)を作成し、研究活動を歴史に残す。さらに、このラボの活動を継続していくために、日本デザイン学会の情報デザイン研究部会を中心に、社会実践デザインを研究とするコミュニティをつくり、活動の持続をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末にCOVID-19禍の影響で、研究打ち合わせと編集会議が開催できなくなったため、一部の研究費の使途を調整せざるを得なかったが、概ね計画通りに研究費を使用できたと考えている。
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