研究課題/領域番号 |
18K11963
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研究機関 | 駿河台大学 |
研究代表者 |
井上 智史 駿河台大学, メディア情報学部, 講師 (70339547)
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研究分担者 |
安藤 公彦 東京工科大学, 片柳研究所, 講師 (00551863)
松永 信介 東京工科大学, メディア学部, 教授 (60318871)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | デザイン教育 / 色彩教育 / eラーニング |
研究実績の概要 |
本研究は、デジタル環境に適応する色彩教育法を、感性に頼らない教育プログラムとして考案することを目的としている。色彩調和や配色という概念を数理モデルとして定義し、それに基づいたeラーニングシステムを構築し、数理的な関係性を活用した色彩教育の有用性を評価する。具体的には、以下の3つの段階で研究を行っている。 1.色彩理論に準じた調和・配色における色の関係性を数値情報として取得する。 2.上記の数値情報に基づいて、調和や配色の概念を数値間の関係性として表現する数理モデルを定義する。 3.数理モデルによる支援・分析などの機能を実装したeラーニングシステムを用い、その有用性を評価する。 平成30年度において、上記1の数値情報に関しては、色彩理論の図版などからコンピュータのカラーモードであるRGBやHSVによる取得や、分光濃度計を用いたYxyやL*a*b*による取得を進め、それらの数値情報と色彩理論の基盤となるマンセル表色系の値との対応について分析した。結果、L*a*b*を中間的に利用することが、アプリケーションによる入力として一般的なRGBと、色彩理論に活用されるマンセル表色系に基づく調和分析とを対応づけるために、現段階で最適であるという方針を得ることができた。またそのことにより上記2に関しては、数値間の関係性として比較的表現しやすい明度をはじめ、色相・彩度間の関係性の定義を行うことができた。さらに、上記3のeラーニングシステムに実装予定の機能の一つについて、プロトタイプの制作に取りかかることができた。明度や彩度の情報を基に同等・類似・対比などの色の関係をグラフやダイアグラムのような方法で可視化することで、コンピュータを用いた色彩構成の際に客観的な指標として参照できる機能の検討を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究スケジュールの当初予定は、「色の数値情報の取得」「色彩調和概念の数理モデル化」「eラーニングシステムの設計(前半)」の3つのステップを行うことであった。 「色の数値情報の取得」に関しては、図版のスキャニングおよび分光濃度系という2種の方法による色の数値情報の記録が順調に進んでいる。また、2種の方法を併用することで相対的な色の関係性を分析するための素地を整えることができることも確認できた。その上で、RGBとマンセルの対応を把握するためには、事前に想定していたYxy値を用いた方法よりも効率的なL*a*b*をその中間的な数値として利用するのが適しているという方針を定めることもできた。 「色彩調和概念の数理モデル化」に関しては、RGBによって入力された複数色間の色相・明度・彩度差などをL*a*b*を介することで表現し、マンセル表色系に準じた同等・類似・対比などの関係を判定することができている。 また、当初の予定より先行してeラーニングシステムのプロトタイプ制作に取り掛かれたことで、「eラーニングシステムの設計(前半)」も滞りなく進んでいると考えている。 数理モデルに関しては今後の研究過程において、配色・調和理論や実制作者の感覚に合致させるようにより精緻なものとする必要があるが、eラーニングシステムの設計が進んだこともあり、研究総体としては、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後1年間は「色の数値情報の取得」「色彩調和概念の数理モデル化」「eラーニングシステムの設計(前半)」の再検討を行いつつ、「eラーニングシステムの設計(後半)」および「eラーニングシステムの構築」を行う。 再検討に関しては、「色彩調和概念の数理モデル化」を重点的に行い、色彩構成などの実習的な色彩課題への適合性を踏まえて、従来の色彩理論を参照する必要性や妥当性をあらためて検証し、調和・配色概念の数値的関係性をより精緻なものとする。また、進捗状況全体の再検討を踏まえ、eラーニングシステムの設計を完成させる。 システム設計としては、実習的な色彩課題の各過程において、色の指定を補助する入力機能、制作途中の状況を分析する分析機能、入力・分析の双方において学習を支援するアドバイス機能を中心的な機能として設計を行う。まず簡易的に実装できるWebシステムとしてプロトタイプを作成し、eラーニングシステムの仕様を確定させ本格的な開発に着手する。 最終年度はeラーニングシステムを運用し評価実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
分光濃度計と合わせて色彩解析ソフトウェアを購入することで、平成30年度に想定していた人件費を軽減しその分を繰越とした。併せて、交付額に応じた使用計画の再検討および研究の初期段階(「色の数値情報の取得」「色彩調和概念の数理モデル化」)を進める中で、従来想定していた次年度以降の人件費およびシステム開発外注費を増額したほうが研究計画全体にとって有益な可能性が生じたため、その使用余地を残し繰越とした。したがって、使用計画としてはeラーニングシステム開発およびその検証をより充実させるための人件費および外注費に充当する予定である。
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