研究課題/領域番号 |
18K11967
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
上平 崇仁 専修大学, ネットワーク情報学部, 教授 (20339807)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | デザイン態度 / デザイン教育 / デザイン思考 / ワークショップ / Co-Design |
研究実績の概要 |
研究計画に上げた5つのうち、本年度は「1)デザイン態度の形成プロセスに関する調査」と「 2)教育者の学習コンテクスト調査」に取り組んだ。 まず1に関しては、デザイン態度に関する教育活動(産技大大学院)を行うと同時に、文献調査、研究者への議論を重点的に行った。大学院でのレクチャー内容の公開、関連文献の出版、デザイン思考に対する停滞感などから、欠けがちな視点としてデザイン態度についての知名度は向上傾向にある。研究者との議論を通して、デザイン態度(Design Attitude)という言葉を個別領域化しないために、「デザインにおける態度/姿勢の問題」としてどの活動にも共通する視座を見えやすくする努力をしたほか、欧米の輸入ではない日本文化を基盤にした態度のあり方についての言語化に取り組んだ。形成プロセスについては引き続き検討を行う。 次に2に関しては、東京都情報教育研究会及び神奈川県情報教育研究会において、次期学習指導要領における情報デザイン教育と教育者が持つべき態度についての招待講演をおこなった。また東京都での講演録をベースに、研究室で開発した教材5点を収録した冊子「すべての人がデザインを学ぶ時代に向けて」(A4変形の全88P)を制作した。冊子は第11回全高情研秋田大会におけるパネル発表の場で頒布を行った。このような一連の取り組みは、研究者自身がまず有益な情報を出すことによって研究の取り組みを知ってもらうこと、全国の先導的な情報教員に協力してもらうための布石としてのものである。実際に冊子を読んだ各地の教員から多くのフィードバックを得ることができた。教員との交流の中で、教員への情報共有ルート(教材や研修、SNSなど)を見出すことが出来たほか、大幅に改訂される予定の情報Ⅰでは多くの教員が不安を抱えていることや圧倒的にリソースが不足していることを改めて理解した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度に取り組んだ「1)デザイン態度の形成プロセスに関する調査」と「 2)教育者の学習コンテクスト調査」の項目については、おおむねと当初の予定通りに実施することができたと言える。 1)の態度形成のプロセスについては、情報デザイン関連の研究者との議論を通して態度の根本となる好奇心や倫理感、それらが伝播していくために必要な要因に関しての仮説を得ることができた。そしてロールプレイイングという方法でツールを利用することを試みた。しかしまだ検討が必要であり、明確なプロセスを構築できていないため、次年度の課題としたい。引き続き調査・検討していく。 2)の教育者の学習コンテクスト調査については、情報科教員との交流によって教員の学び方を調査し、デザイン学習に関しての手がかりをさぐった。授業外の多忙さの他に、情報の専門教員と臨時教員の間には、想像以上の意欲格差が存在することがわかったほか、情報科を先導する教員達のコミュニティの豊かさも確認した。またデザイン学習において態度の視座は言語化しにくいため、プログラム開発において、どのような工夫がありうるかを引き続き検討していく。 また本研究は教育者(教員)を主たる対象にしているが、関連してデザイン学習の初学者に対するデザイン学習支援も行っている。高等学校における情報教育への貢献として、2018年度は上述した招待講演(2回)・小冊子の頒布(約200部)の他、高校生への教材開発と模擬授業(都立高校で2回)、デザイン1DAYワークショップ(大学で参加者公募1回)、ロールプレイイングを取り入れた発想ワークショップ(社会人向け1回)を実施した。これによって高校生達がどのようにデザインを学ぶかも同時に調査している。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は5カ年の研究計画の2年目である。ここまで取り組んできた「1)デザイン態度の形成プロセスに関する調査」と「 2)教育者の学習コンテクスト調査」を引き続き調べながら、得られた知見を反映しつつ統合するフェーズに入る。特に前年度明らかに出来なかった「態度形成のプロセス」については、国内外のデザイン研究者と議論を行い、明確化することを重点課題とする。本年度は海外での情報収集と議論を予定している。またこれまで構築した高校教員とのネットワークを用いて、デザイン学習に関してのヒアリングを継続する。 次に、デザインにおける態度/姿勢の観点での職能育成について、これまで得た知見を反映させながら具体化した教育者向けデザイン学習プログラム(冊子/ワークショップメニュー等)の開発に着手する。本年度は試験的なプロトタイプ制作を行う予定である。同時に、プロトタイプを通じて、研究者と議論し、教育者が持つべきデザイン態度の育成に関する要点についての考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は講演や冊子制作など手を動かす活動を精力的に行ったため、理論面での調査に時間を割くことが難しかった。そこで2019年度には前年度明らかに出来なかった「態度形成のプロセス」を重点課題とすることを決め、夏期休暇に海外(オーストラリア)での研究者との意見交換と情報収集を行う予定である。そのための旅費が必要である。2019年度の予算は少ないため、2018年度の予算を削って旅費に加算することとした。
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